陸水と海洋

表記について

陸水

水資源

陸地に囲まれた水を陸水と言います。
地球上の水は、約97.5%が海水で、わずか約2.5%が陸水に過ぎません。
この陸水が、資源として価値が非常に高いのです。
さらに陸水のうちで利用の難しい氷河や地中深くの地下水を除くと、私たちが利用できる陸水は全体の0.01%だけです(河川、湖沼、地下水の一部)。
この限りある0.01%をどう利用するかが今後の課題です。
地球上の水
地球上の水

河川

河川水は、農業用水・工業用水、そして水運に利用されます。

水運

水運は、緩勾配で1年の最大・最小流量の差が少ない河川で発達します。
また、1年を通して水の安定供給が水運には欠かせません。
これらの特徴は、安定陸塊を流れるヨーロッパの河川に当てはまります。

ライン川の水運
一方で、日本の河川は急勾配で1年の最大・最小流量の差が大きく、水運の発達があまり見られません。
夏の季節風で降雨は多いものの、河川の水はすぐに海へと流れてしまいます。
これは、日本が期造山帯に位置し、河川が急勾配だからです。
河川の勾配
河川の勾配

湖沼

湖沼の水は、農業用水・工業用水に利用されます。

代表的な湖

バイカル湖
バイカル湖は、シベリア南西部の断層湖で、世界一深いことで有名です。
タンガニーカ湖
アフリカ大陸東部のアフリカ大地溝帯に形成された湖です。
タンガニーカ湖に次いで世界二位の水深です
チチカカ湖
チチカカ湖は、南アメリカ大陸のアンデス山脈高地にある湖です。
汽船などが行き来できる湖のうちで、標高3,810mという世界で最も高い場所にある湖です
カスピ海
カスピ海は、西アジアにある世界最大の湖で、塩分濃度が高い塩湖です。
カスピ海・アラル海は陸地によって海と遮られるため地形的に「湖」だが、一説によれば、海のように広く、塩分濃度が高いため「海」と命名(資源をめぐる法的理由も存在)

地下水

地下には土・砂・岩石などの隙間を満たすように水が存在します。

灌漑

灌漑は、農作物の生育に必要な水を河川や地下などから供給しておこなうことです。
特に乾燥地域では地下水をくみ上げて灌漑に利用します。
アメリカ合衆国のグレートプレーンズでは、センターピボットと呼ばれる、くみ上げた地下水に肥料をまぜて自走しながら散水する装置が利用されています。
コロラド州のセンターピボット
コロラド州のセンターピボット

センターピボットの中心

被圧地下水と自噴

オーストラリアのグレートディバイディング山脈の山麓では、山地の雨水が水を通しにくい地層(不透水層)の底に溜まっています。
この水は、不透水層に挟まれて大気圧以上の圧力がかかるため、被圧地下水と呼ばれます。
被圧地下水は、井戸を掘ると被圧地下水の水面まで上がってきます。
井戸の高さが被圧地下水の水面以下だと、被圧地下水は自噴します。
被圧地下水
被圧地下水
グレートディバイディング山脈西部のグレートアーテジアン大鑽井だいさんせい)盆地では、地層を掘り抜いた井戸で水(被圧地下水)を得ます。
この水は塩分濃度が高く、灌漑用途や人の飲み水には不向きです
は塩分濃度が高い水でも飲める動物なので、その飲み水に利用しています。
アーテジアン(鑽井盆地)
自噴する井戸が多く集まっているところという意味
掘り抜き井戸
掘り抜き井戸

問題

赤潮

生活排水・農業用水・工業用水の流入で、水中の窒素等の濃度が高くなる「富栄養化」が進むと、水中の藻やプランクトンが増殖してしまいます。
プランクトンが異常増殖すると、河川や湖沼などが変色し、これを赤潮と言います。
赤潮
赤潮

塩害

河川や湖沼、地下水にはある程度の塩分が含まれています。
十分に排水ができないまま大規模な灌漑を続けると、土壌に塩分を含む水が溜まっていきます
この水が地中に浸透していくと、塩分を含む地下水と毛細管現象で繋がります。
乾燥地域では毛細管現象でもち上がった水が蒸発し、塩分のみが地表に残されます。
やがて塩分濃度が高く土地では、塩分で農作物が育たなくなる被害(塩害)を受けます。

湖の縮小

灌漑農業
灌漑農業は、農作物の生育に必要な水を河川や地下などから供給しておこなう農業です。
湖の水源である河川が、灌漑農業に利用されると、湖へ流入する水が減ります。
中央アジアのカザフスタンとウズベキスタンとの間には、アラル海と呼ばれる塩湖が広がります。
近年、アラル海に注ぎ込まれるシルダリア川・アムダリア川から、綿花の栽培のために大量に取水しています。
アラル海に流入する水量が減少し、アラル海の面積が縮小しました。
20世紀最大の環境破壊と言われ、周辺では漁業の廃業や塩害が発生しています。
シルダリア川・アムダリア川の取水
シルダリア川・アムダリア川の取水
アラル海の縮小(左:1989年、右:2014年)
アラル海の縮小(左:1989年、右:2014年)
気候変動
長期にわたって雨が降らず、水不足になることを干ばつと言います。
水を貯えた湖も、干ばつが続くことによって縮小していきます。
アフリカのサハラ砂漠南部のチャド湖は、近年の気候変動による干ばつの影響で急速に縮小しています。
ただし、この縮小は流入する河川での灌漑農業や周辺での過放牧も要因であると指摘されています。

海洋

陸地と海洋

表面積

陸地と海洋の面積比率=3:7です。
緯度ごとの陸地・海洋の比
緯度ごとの陸地・海洋の比

陸半球・海半球


陸半球

水半球

大洋と付属海

海流

常にほぼ一定の方向に移動する海水の流れを海流と言います。
海流は、風、海水の密度、傾斜を理由として生じます。
海流のうち、流は低緯度から高緯度へ流は高緯度から低緯度へ流れます。
また、北半球では時計回りに、南半球では反時計回りに流れます。
海流
海流

暖流

暖流は、低緯度から高緯度へ流れる海流で、周りの海域よりも比較的水温が高くなります。
暖流の上には暖かく湿った空気が流れるため、沿岸の気候は年中温暖で湿潤になります。
ヨーロッパ西岸部~中部
ヨーロッパの西側は、流の北大西洋海流が流れ、その上を偏西風が吹きます。
この海流と風の影響を受ける地域では、高緯度でありながら冬場も温暖で、気温の年較差が小さくなります。
ヨーロッパのCfbの分布
ヨーロッパのCfbの分布
アラスカ湾岸~カナダ西岸
亜寒帯海流は、西経150度付近で、北流するアラスカ海流と南流するカリフォルニア海流に分かれます。
アラスカ湾岸~カナダ西岸は、暖流のアラスカ海流と偏西風の影響で高緯度でもそれほど冷え込まず、気温の年較差が小さくなります。
西岸海洋性気候、もしくは統計データによって地中海性気候になります。
アングロアメリカのCfbの分布
アングロアメリカのCfbの分布
オーストラリア大陸東部とニュージーランド
東部沿岸を流れる流の東オーストラリア海流の影響を受け、温暖湿潤気候(Cfa)・西岸海洋性気候(Cfb)が分布します。
特にニュージーランドは、暖流に加えて偏西風の影響も大きく、年間を通じて湿潤になり、西岸海洋性気候(Cfb)が分布します。
オセアニアのCfa・Cfbの分布
オセアニアのCfa・Cfbの分布

寒流

寒流は、高緯度から低緯度へ流れる海流で、周りの海域よりも比較的水温が低くなります。
寒流の上には冷たく湿った空気が流れます。
そのため、沿岸の気候は冷涼な気候になります。
特に寒流の影響が強い沿岸では、海岸付近の空気は冷たく、海岸から離れた山地で空気が暖かくなっています。
雨を降らせる上昇気流が発生しにくく、海からの湿った風は霧となって通りすぎるだけです。
その結果、海岸付近に砂漠が形成されます。
冷涼海岸砂漠
冷涼海岸砂漠
ナミブ砂漠
アフリカ南西岸に沿って、流のベンゲラ海流が北上します。
空気が冷やされて安定し、雲を形成する上昇気流が生じず乾燥します。
このような成因で、ナミブ砂漠がアフリカ南西岸に沿って広がります。
ナミブ砂漠とベンゲラ海流
ナミブ砂漠とベンゲラ海流
ナミブ砂漠
ナミブ砂漠
アタカマ砂漠
アタカマ砂漠とペルー海流
アタカマ砂漠とペルー海流
アタカマ砂漠
アタカマ砂漠