第3次産業-商業・観光業・交通運輸業・情報通信業

表記について

産業分類

第3次産業

産業は次の3つに分類されます。
経済が発達すると、第1次産業が減少し、第2次産業・第3次産業の人口が増加します。
日本では7割以上の人口が第3次産業に従事しています。

商業・サービス業

卸売業・小売業

商業は卸売業と小売業に大別されます。
卸売業・小売業
卸売業・小売業

卸売業

卸売業は多くの小売業者が商品の仕入れをしやすいように中心都市に立地します。
商品販売額を見ると、三大都市圏の中心都市がある東京・大阪・愛知(名古屋)、そして地方の中心都市がある北海道(札幌)・広島・宮城(仙台)・福岡で多いです。

小売業

小売業は、人々の需要に応えるために、人口規模に比例して多く立地します。

小売業の業態

小売業の業態には、次のようなものがあります。

商業・サービス業の立地

商業・サービス業の立地
商業・サービス業の立地
(2014年センター地理B本試験より引用)

小売業の新しい業態

インターネットを利用した通信販売が増加しています。
また、店舗をもたずに商品を販売する無店舗販売も多くなってきています。

観光業

新しい旅行の形

近年、次のような新しい旅行の形が登場しました。

観光地・旅行収支

1980年代以降、航空交通の運賃の低下が追い風になり、国際観光旅行が増加しました。
国際観光旅行では、Cs(地中海性気候)で過ごしやすいフランス・スペイン・イタリア国土が広く多様性に富むアメリカが人気です。
特に地中海沿岸には、ヨーロッパ北部の人々がバカンス(長期休暇)の慣習を利用し、避寒地として訪問します。
これらの国の旅行収支は黒字になります。
今日では、物価の安さを求めて中国への旅行者も増加しています。
日本も観光客の誘致に力を入れ、近年は旅行収支が黒字になりました
観光客数上位(2019年)
国名客数(万人)収支(億ドル)
フランス8932121
スペイン8351517
アメリカ7926587
中国6573-2188
イタリア6451192

日本の観光業

1980年代後半、円高が進み、日本人海外旅行者数が増加しました。
旅行先は、中国・韓国・台湾などの近隣が多いです。

交通運輸業

交通の発展

人は交通機関を発展させ、「時間距離(2点間の移動に必要な時間)」を短縮してきました。
交通機関には、次の4つがあげられます。

鉄道交通

長所

大量の旅客・貨物を長距離にわたって、迅速・安全・確実に輸送できます。
さらに、定時性に優れます(定時に到着します)。

短所

山地や勾配など地形的な制約を受けやすく、トンネル・鉄道・新規線路の敷設に莫大な経費が必要になります。

高速鉄道の導入

鉄道交通は、自動車の利便性に押され、その利用が先進国を中心に減少・停滞しています
一方、途上国では鉄道交通が貨物・旅客ともに重要な地位を占めています
近年、大都市間の旅客輸送に新幹線などの高速鉄道が導入され、鉄道交通の利用量をあげています。
フランスのTGV、ドイツのICE、ロンドン・パリ間のユーロスターが有名です。
NIEsや中国などでも高速鉄道が導入されるようになってきました。

環境に優しい鉄道交通

鉄道交通は、自動車交通に比べて大気汚染を招かず、エネルギーの消費効率も良いです。
鉄道の利用推進のため、駅付近の駐車場に停めて都心までは鉄道交通を移動するパークアンドライドが推奨されています。
パークアンドライド
パークアンドライド
さらに、新型路面電車(LRT)を市街地に導入する例も増えています。
ドイツのフライブルクやフランスのストラスブールが有名です。
両都市は歴史的な街並みを残し、自動車で郊外から都心部に移動する際には、途中でLRTやバスに乗り換えるパークアンドライドに取り組んでいます。
LRT
特徴は段差がなく、走行時の騒音や振動が少ないこと
LRT
富山市のLRT

自動車交通

長所

鉄道のような時間・経路の縛りがなく(任意性が高く)、戸口輸送(目的地まで直接届くこと)が可能です。

短所

輸送量が少ないこと、燃料で大気汚染を起こしやすいこと、交通渋滞を起こしやすいことなど、様々な短所があります。

モータリゼーションとその影響

経済発展に伴い、自動車が生活必需品化する現象を、モータリゼーション(車社会化)と言います。
モータリゼーションにより、駐車場の設置や高速道路の整備が必要になりました。
駐車場の設置に対応できない商店街は衰退し、広い駐車場を完備した幹線道路沿いの総合スーパー(大型小売店)が消費者を集めるようになりました。

諸問題への対応

自動車交通は、交通渋滞・大気汚染の問題を考える必要があります。
近年、道路の拡幅だけでなく、ロードプライシング(入域課金制)やラウンドアバウトなどの取り組みがあります。
トラックなどの自動車交通による輸送を、環境負荷の小さい鉄道交通・水上交通に変換していくモーダルシフトという動きが、先進国を中心に起きています。

水上交通(海上・内陸水路)

長所

船を用いるため、安価で大量に重量のある貨物を運べます

短所

速度が遅いため、時間がかかります。
また、水路のある場所に利用が限られ、自然の制約も大きいです。

世界貿易の中心

船舶による輸送は、速度が遅いが、大量に安価に運べます。
鉄鉱石・石炭・石油などの資源、鉄鋼・木材などの素材は重量が重く、船舶で運ぶことが最も良い方法です。
船舶による輸送は、世界貿易の中心となっています。
海上輸送
船舶の遅い速度を補うため、エジプトのスエズ運河や、太平洋とカリブ海を結ぶパナマ運河などの国際運河が建設されました。
パナマ運河
パナマ運河
スエズ運河
スエズ運河
時間を短縮するために、専用の箱で鉄道・トラックにそのまま積み替えられるコンテナ船、オイルタンカーやバルクキャリア(ばら積み貨物船)などの専用船も利用されています。
コンテナ船は海上輸送の主役で、近年、アジア内での取扱いが増えています
ばら積み貨物
包装されない状態の大量の貨物
コンテナ船
コンテナ船
バルクキャリア
バルクキャリアにくず鉄を積む
主な港のコンテナ取扱量(2017年、万TEU)
港名国名2017年
シャンハイ(上海)中国4,023
シンガポールシンガポール3,367
シェンチェン(深圳)中国2,521
ニンポー(寧波)中国2,461
ホンコン(香港)中国2,077
プサン(釜山)中国2,047
コワンチョウ(広州)中国2,037
チンタオ(青島)中国1,830
ロサンゼルスアメリカ1,689
ドバイアラブ首長国連邦1,544
テンチン(天津)中国1,507
ロッテルダムオランダ1,373
TEU
20フィートのコンテナに換算したコンテナ数の単位
内陸水路輸送
内陸水路輸送は、平野が広がり、河川勾配が小さい河川で利用されます。
日本は河川勾配が大きく、季節による水量の変化が大きいため適しません。
ヨーロッパは平野が広がり、西岸海洋性気候で河川の流量が安定するため、古くからライン川やドナウ川などの国際河川や内陸水路が発達しました。

便宜置籍船

便宜置籍船は、船の登録税や取得税などの税金の安い国に船の籍を置いたものです。
この理由で、パナマリベリアが世界の1・2位の商船保有国になっています。

航空交通

長所

最も迅速に貨物輸送が可能で、地形や水陸分布による制約がありません。

短所

気象による制約が大きく、発着が空港に限られます。
また、コストが高く、重量のある貨物には適しません。

歴史と利用

航空交通は、冷戦などの背景に、1970年代から利用が始まります
航空交通は、先進国からなるヨーロッパと北アメリカを結ぶ路線が中心です。
人だけでなく、軽量・小型・高付加価値のIC(集積回路)なども輸送されます。

国別輸送量の割合の変化

国別輸送量の割合の変化
主な国 貨物・旅客 輸送量 鉄道(%) 自動車(%) 船(%) 航空(%)
日本 1960年 貨物 1,389億トンキロ 39.2 15 45.8
旅客 2,433億人キロ 75.8 22.8 1.1 0.3
2009年 貨物 5,236億トンキロ 3.9 63.9 32 0.2
旅客 13,708億人キロ 28.7 65.6 0.2 5.5
アメリカ 貨物 58,793億トンキロ 38.5 31.4 15 0.4
旅客 77,496億人キロ 0.1 88.1 11.7
ドイツ 貨物 4,136億トンキロ 23.1 59.4 13.4 0.2
旅客 10,546億人キロ 9.4 90 0.6
イギリス 貨物 2,547億トンキロ 7.4 61.9 26.4
旅客 7,895億人キロ 7.9 91 1.1
2009年
国ごとの輸送量は、経済活動の規模の違いが前提となります。
国土が大きく経済活動が盛んな国では、鉄道だけでなく、航空による輸送量も多くなります
アメリカ・中国は鉄道だけでなく航空による輸送量も多いが、経済の規模で下回る中国では航空による輸送量がやや少ない
また、植民地支配されていた国では、植民地時代に宗主国が敷いた鉄道の利用が貨物・旅客ともに盛んです(例:インド)。
他にも、ブラジルのような密林地帯で鉄道開発が困難な国では、輸送量が極めて少なくなります。
アメリカのように国土面積が大きく、経済活動が極めて盛んな国では鉄道だけでなく航空による輸送量も大きくなります。

日本

日本では、2009年にかけて鉄道交通が減少、自動車交通が増加しました。
また、島国なので船の利用は自動車に次いで高い地位にあります。

アメリカ

アメリカでは、貨物は鉄道交通と自動車交通、旅客は自動車交通と航空交通がかなりの割合を占めます。

情報通信業

時差

航空交通で人やものが国々を行き交い、情報通信技術で他国とのやり取りがあり、時差を意識する場面も増えてきました。

情報技術

電話回線

固定電話
固定電話は、携帯電話以外の電話です。
固定電話の電話線の敷設には、大きな資本が必要です。
先進国では時間をかけて普及しましたが、途上国では難しい状況です
固定電話契約数(100人あたり)
日本 タイ 韓国 アメリカ 中国
49.9 4.2 50.6 33.6 13.5
2018年
移動電話
移動電話は、いわゆる携帯電話のことです。
1990年代から急速に普及し、アンテナの敷設による基地局建設のみで済むため、資本がそれほどかかりません。
固定電話と異なり、途上国でも普及しやすいのです
移動電話契約数(100人あたり)
日本 タイ 韓国 アメリカ 中国
141.4 180.2 129.7 120.9 115.5
2018年

インターネット

インターネットは、コンピュータを相互に接続したネットワークのことです。
発展途上国はコンピュータの保有者が少ないため、インターネットの利用者率が低くなります。
中国は、先進国と比較するとインターネット利用者率が低いですが、人口が多いため利用者数は世界1位です。
インターネット契約数・使用者率
日本 タイ 韓国 アメリカ 中国
インターネット契約数
(1000件)
41,495 9,189 21,286 110,568 407,382
インターネット利用者率
(%)
91.3 56.8 96.0 87.3 54.3
2018年

北欧の事情

北欧など寒冷な地域では、屋外に出ずに情報を得る必要があるため、固定電話の普及率が高くなります。