ヨーロッパ地誌-概説①

表記について

地形

ヨーロッパの主な地形は次の図の通りです。
ヨーロッパの地形
ヨーロッパの地形

大地形

ヨーロッパは、安定陸塊からなる低地が多く、標高200m未満が5割です。
南部には新期造山帯に属する山脈が横断し、北部には古期造山帯に属する山脈が分布します。
古期造山帯:
スカンディナヴィア山脈・ぺニン山脈など
新期造山帯:
ピレネー山脈・アルプス山脈など

アイスランド

アイスランドは、広がる境界上に位置します。
そのため、アイスランドの島々には温泉・火山が分布し、海底には大西洋中央海嶺が形成されています。

ヨーロッパ北部~中部

山脈

スカンディナヴィア半島には、古期造山帯のスカンディナヴィア山脈が分布します。

大陸氷河

ヨーロッパ北部~中部は、かつて氷河に広く覆われました。
そのため次の場所には氷河地形が見られます。
ノルウェー西岸部:フィヨルド
フィンランド:氷河湖
北ドイツ平原:モレーン
氷河の最大範囲
氷河の最大範囲
氷河地形
氷河地形
氷食を受けた地域は、肥沃な土壌が侵食・運搬されたためにやせ地になります。
やせ地は畑作に適さないため、酪農や林業が営まれます。
北ドイツ平原の南縁は、モレーンから飛来した肥沃なレス堆積して畑作が活発

ヨーロッパ中部

河口

次の2つの理由から、河口にエスチュアリーが発達しています。
例:テムズ川・エルベ川・セーヌ川・エヌル川
アルプス山脈から大量の土砂が河口に運ばれるため、ライン川にはエスチュアリーが形成されていません。
エスチュアリー
エスチュアリー
ヨーロッパ中部の河川
ヨーロッパ中部の河川

パリ盆地

ケスタが発達しています。
適度な傾斜で日照が均等に届き、水はけもよいため、ぶどう栽培に適しています。
ケスタ
ケスタ
傾斜面の日照
傾斜面の日照

ヨーロッパ南部

山脈

新期造山帯のアルプス山脈・ピレネー山脈が分布します。
これら山脈には、山岳氷河によるカール・ホーンなどの氷河地形が見られます。

海岸

スペイン北西部
リアス海岸が発達しています。
リアス海岸
スペインのリアスバハス(リアスバイシャス)に見られることに由来
リアスバハス
リアスバハス
クロアチア南西部
海岸線に垂直に連なるV字谷が沈水して形成されるリアス海岸に対して、平行に連なるV字谷が沈水して形成される海岸をダルマチア式海岸と呼びます。
この地形がクロアチア南西部で見られます。
スロベニア西部
カルスト地形が発達しています。
地中海沿岸
石灰岩と間帯土壌のテラロッサが分布しています。
地中海の建築
地中海の建築

気候

ヨーロッパの気候
ヨーロッパの気候

ヨーロッパ西岸部~中部

ヨーロッパの西側は、流の北大西洋海流が流れ、その上を偏西風が吹きます。
この海流と風の影響を受ける地域では、高緯度でありながら冬場も温暖で、気温の年較差が小さくなります。
ヨーロッパは標高200m未満の低地が広がり、南部には東西にアルプス・ヒマラヤ造山帯の山脈が連なります。
偏西風が遮られず、山脈に沿うように内陸まで到達します。
年間を通して湿潤で、寒すぎず暑すぎない(最寒月平均気温がー3℃を下回らない、最暖月平均気温が22℃を上回らない)、西岸海洋性気候(Cfb)が広範囲に分布します。
ヨーロッパのCfbの分布
ヨーロッパのCfbの分布

西岸海洋性気候の分布

偏西風は北アメリカや南アメリカの西岸部にも吹き込みますが、これらの地域にはヨーロッパに比べてCfbがほとんどありません。
北アメリカや南アメリカは太平洋に沿って南北に山脈が走るため、偏西風が遮られてしまうからです。
世界のCfbの分布
世界のCfbの分布

ヨーロッパ北部

ヨーロッパの北部は、スカンディナヴィア山脈が偏西風や暖流の影響を弱めます。
山脈の風上には南北に西岸海洋性気候(Cfb)が、風下には亜寒帯湿潤気候気候(Df)が分布します。
また、西岸海洋性気候が分布する西部に比べて、気温の年較差が大きくなります。
ヨーロッパのDfの分布
ヨーロッパのDfの分布

ヨーロッパ東部

隔海度が大きくなるほど、偏西風や暖流の影響が及びにくくなります。
結果、ヨーロッパ東部では亜寒帯湿潤気候気候(Df)が分布します。
この地域では、西岸海洋性気候が分布する西部に比べて、気温の年較差が大きくなります。

ヨーロッパ南部

ヨーロッパ南部は、夏に北上した中緯度高圧帯(亜熱帯高圧帯)の影響で少雨になります。

各都市の雨温図

ヨーロッパの都市
ヨーロッパの都市
レイキャビク
レイキャビクはアイスランドの首都です。
暖流の北大西洋海流と偏西風の影響で、年間を通して湿潤で温暖です。
レイキャビクはロンドンに比べて緯度が高いため、ロンドンよりも年間の気温がやや低くなります。
レイキャビクの雨温図
レイキャビクの雨温図(Cfb)
ロンドン
ロンドンはイギリスの首都です。
暖流の北大西洋海流と偏西風の影響で、年間を通して湿潤で温暖です。
レイキャビクの雨温図と比較すると、ロンドンは年間の気温がやや高くなります。
ロンドンの雨温図
ロンドンの雨温図(Cfb)
なお、日本の札幌は北緯41.28度で、北緯51.3度のロンドンよりも緯度が低くなります。
雨温図を比較すると、暖流の北大西洋海流と偏西風がどのような影響を与えるかわかります。
札幌の雨温図
札幌の雨温図(Df)
リスボン
リスボンはポルトガルの首都です。
夏は中緯度高圧帯(亜熱帯高圧帯)の影響で乾燥します。
リスボンの雨温図
リスボンの雨温図(Cs)
ヘルシンキ
ヘルシンキはフィンランドの首都です。
スカンディナヴィア山脈が暖流の北大西洋海流と偏西風の影響を弱めるため、気候は亜寒帯湿潤気候(Df)になります。
ヘルシンキの雨温図
ヘルシンキの雨温図(Df)

言語

語族・語派

大半がインド=ヨーロッパ語族です。

インド=ヨーロッパ語族

南西部:ラテン語派
北西部:ゲルマン語派
東部:スラブ語派
その他:ケルト語派(アイルランド語)
インド=ヨーロッパ語族の主な語派
インド=ヨーロッパ語族の主な語派
語派の類似性
語派の類似性

他の語族

ウラル語族(フィンランド語・ハンガリー語など)

ベルギーの言語

1830年、カトリック教徒が多いことを理由に、ベルギーがオランダから独立しました。
独立がフランス語を話す人々(ワロン地方の人々)中心でおこなわれたため、ベルギーではフランス語が政治的優位になりました。
しかし、次第にオランダ語を反す人々(フラマン地方の人々)が経済的に豊かになり、公用語など諸制度への反発が強まりました。
現在のベルギーでは、対立を回避するために次の3言語を公用語に設定しています。
北部:オランダ
南部:フランス
東部:ドイツ
ベルギーの言語
ベルギーの言語

スイスの言語

スイスでは、次の4言語を公用語に設定しています。
北部~中央:ドイツ
南部:イタリア語・ロマンシュ語
西部:フランス
スイスの言語
スイスの言語

宗教

ヨーロッパ各国で信仰される宗教は、大半がキリスト教です。
ヨーロッパの宗教
ヨーロッパの宗教

キリスト教

キリスト教の教派の分布は、語派とほぼ共通します。
南西部:カトリック
*ラテン系民族
北西部:プロテスタント
*ゲルマン系民族
東部部:東方正教
*スラブ系民族

教派と語派の不一致

アイルランド(ケルト系)、ポーランド・チェコ・スロバキア(スラブ系)
カトリック
ルーマニア(ラテン系)
東方正教

インド=ヨーロッパ語族以外と教派

ハンガリー(ウラル系)
カトリック
フィンランド(ウラル系)
プロテスタント

イスラーム

南東部のバルカン半島に位置するアルバニア・コソボ・ボスニアヘルツェゴビナでは、イスラームが信仰されています。

民族問題

北アイルラン紛争

イギリスの北アイルランドでは、多数のプロテスタント住民(ゲルマン系)が政権を独占し、少数のカトリック住民(ケルト系)が経済的に貧しい状況に置かれています。
カトリック住民は分離独立を要求しています。
対立はEUの経済統合で国境が消え、近年融和が進んでいました。
しかし、イギリスがEUを脱退したので、対立の再燃が懸念されています。
イギリスの4つの地域
イギリスの4つの地域

バスク独立運動

ピレネー山脈を挟んでスペインとフランスにまたがる地域には、独自の文化をもつバスク人が居住しています。
この地域はバスク地方と呼ばれ、20世紀後半、スペイン・フランス両国からの独立を要求める運動が盛んになりました。
現在、スペイン領内のバスク地方は、自治権を認められてバスク自治州となりましたが、独立をめぐる問題は残っています。
バスク地方とカタルーニャ自治州
バスク地方とカタルーニャ自治州

カタルーニャ独立運動

スペイン北東部のカタルーニャは、スペインのなかにありながらも独自の伝統・習慣・言語をもつ地域です。
自治権を認められてカタルーニャ自治州となりましたが、近年、独立運動が盛んになりました。
サグラダファミリア
サグラダファミリア
*カタルーニャ自治州の有名な建造物

旧ユーゴスラビア連邦

1945年、次の6の共和国でユーゴスラビア社会主義連邦共和国を建国しました。
多数の民族・宗教が共存する「モザイク国家」で、強力な指導者と社会主義という枠でまとまっていました。
しかし、まとまりは次第に失われ、1990年代に解体しました。
ユーゴスラビア
「南スラブ人の国」の意味
ユーゴスラビア社会主義連邦共和国
ユーゴスラビア社会主義連邦共和国

コソボ

セルビア南部のコソボ自治州のアルバニア人には、イスラームの信者が多くいます。
2008年、コソボ自治州は分離独立を宣言しました。
現在、日本を含めた多くの国々がコソボを国家として承認していますが、セルビアやロシアは反対し、国連に加盟できていません。
旧ユーゴの宗教分布
旧ユーゴの宗教分布

キプロス問題

地中海のキプロスでは、北部と南部で住民に次のような違いがあります。
北部:少数派で、イスラーム教徒のトルコ系住民
南部:多数派で、東方正教徒のギリシア系住民
1974年、トルコ系住民がトルコの支援を受け、一方的に独立を宣言しました。
この宣言は国際的に承認されていませんが、現在次の2つの国が併存する状態です。
北部:北キプロス・トルコ共和国(トルコ系)
南部:キプロス共和国(ギリシア系)
このキプロス問題は、トルコのEU加盟が難航する理由の一つでもあります。
キプロス
キプロス
キプロス問題
キプロス問題