都市と周辺部
都市の内部
人が居住するところで、第2・3次産業が経済を支えているものを都市と呼びます。
一般的に第3次産業は、第2次産業よりも収益率がよいです。
都市において、就業人口が多く重視されるのは、第3次産業となります。
大都市の中心部ほどその傾向は強くなります。
都心
大都市の中心部には、企業の本社や支社・支店、行政機関など経済を支える機能が集まる地域(都心)が形成されます。
都心の中でも交通の便がよく、ビジネスに特に優れる地区をC.B.D(中心業務地区)と言います。
C.B.D
Central Business Districtの略
副都心
都市が発展すると、都心にあった企業・施設が都心の機能の一部をもって都心周辺の市街地に分散します。
都心の機能を代行するような地域を副都心と呼びます。
周辺部
都心・副都心が整うと、地価が高くなります。
居住環境に向かず、人々は都市郊外に居住を移します。
つまり、都市が発展すると、その地域に住む人口(常住人口・夜間人口)が減少します。
都市郊外では人口が増加し、ベッドタウンなどの衛星都市やニュータウンが形成されていきます。
この形成は無計画・無秩序な土地利用が発生しやすく、土地が虫食いのように開発されるスプロール現象を伴います。
大都市のモデル
都市郊外に住む人の多くは、昼間都心に通学・通勤します。
この人口の移動により、都心の日中の人口(昼間人口)は、夜間人口を大きく上回ります。
このような人口の増減減少をドーナツ化現象と呼びます。
ドーナツ化現象
東京23区の昼間人口指数のコロプレスマップ
*昼間人口指数=(昼間人口/夜間人口)✕100
都市化と都市の拡大
先進国の都市化
先進国では、産業革命後に第2・3次産業の就業人口が増加し、都市が形成されました。
第2・3次産業中心の都市は収益率が高く、村落の人々はこれに魅了されて都市に移り住みました。
このようなPull型で、さらに都市化が進展しました。
Pull型
発展途上国の都市化
発展途上国では、村落の人口が急激に増加しています。
稼ぎや雇用機会が少ないので、家族の一部(次男や三男など)は都市に出て仕事を探すしかありません。
このような半ばやむにやまれず都市に行くPush型で、都市化が進展しました。
ただし多くの場合、都市にはそれほど雇用の余裕がなく、人だけ集まってきているのが実情です。
Push型
都市の拡大
成長した都市には、その位置づけや他都市との連携から次のような呼称があります。
メトロポリス
国・地方の経済や文化の中心になる大都市
(例)東京・名古屋・大阪
メガロポリス
複数のメトロポリスがつらなった地域
(例)東京~名古屋~大阪
コナベーション
隣接する都市が結合し、境界が不明確に なったこと
(例)東京・川崎・横浜
メガロポリス
コナベーション
都市問題
先進国の都市問題
都心は優れた機能を有するため、地価が高くなります。
また、過密化によって交通渋滞や大気汚染など居住環境が悪くなります。
結果、人々はより良い環境を求めて郊外に居住を移します。
郊外の問題
郊外には、都心に通学・通勤する人々が居住するベットタウンなどの衛星都市やニュータウンが形成されます。
郊外の常住人口(夜間人口)は増加し、反対に都心の人口が空洞化するドーナツ化現象が生じます。
加えて、郊外の開発は時に無秩序・無計画な土地利用が拡大するスプロール現象を伴います。
都心の問題
人々が郊外に移った結果、都心やその付近には、老朽化した集合住宅などが残されます。
そこに低所得層が集まり、犯罪なども多くなる不良住宅地区スラムが形成されます。
地域全体が低級化していくこの問題をインナーシティ問題と言います。
なお、先進国では、郊外の地価もある程度高く、雇用機会がある都心までの交通費がかかるため、郊外にはスラムが形成されにくいです。
従って、先進国のスラムはインナーシティ・スラムと呼ばれるものが多くなります。
発展途上国の都市問題
近年、発展途上国では村落から都市に向けての人口移動が著しいです。
移動の理由はほぼPush型であり、定職につける割合も多くありません。
このような人口移動で、発展途上国では次のような問題が生じています。
- 都市外縁部にスラムが形成
- ホームレスやストリートチルドレンなど路上生活者が増加し、生計を立てるために密輸・麻薬取引に関与
- 水道や電気の不法利用、インフラの整備不足による水質汚濁
- 自動車が増加し、交通渋滞の発生、排ガスによる大気汚染
- 人口が首都に一極集中
途上国のスラム
発展途上国では、インナーシティ問題が生じている都市にも、村落からPush型で人々がやってきます。
居住場所・雇用機会はすでに飽和状態であり、職に就けずに保障も受けられない人がでてきます。
このような人々は、ホームレスやストリートチルドレンなどの路上生活者になり、線路沿線や都市郊外の土地を不法に占拠してスラムを拡大させます。
従って、発展途上国のスラムは都市の外縁部の斜面や低湿地に形成されます。
線路沿いに形成されたバングラデシュのスラム
プライメートシティ-メキシコシティの例
発展途上国では、特定の都市だけインフラが整備されていたりします。
例えば、メキシコの首都メキシコシティは、金融機関や行政機関などが一極集中し、他都市に比べて極めて人口が多くなっています。
このような都市をプライメートシティ(首位都市)と言います。
他にもタイのバンコク、インドネシアのジャカルタ、韓国のソウルもプライメートシティです。
メキシコの都市人口第10位まで(2010年)
メキシコシティでも、先にあげた①~④の問題が生じ、特に排ガスによる大気汚染が深刻です。
メキシコシティは山に囲まれた盆地のため、排気ガスが滞留しやすく、都市がスモッグに覆われる規模にまで発展しています。
標高が2,000m以上でエンジンが不完全燃焼になりやすいことも原因です。
メキシコシティの空を覆うスモッグ
近年、排ガス検査の義務化や市街地への自動車乗り入れ制限などの対策をとっています。
都市型水害
都市化が進むと、森林や田畑が減少し、雨水が浸透しづらいコンクリートの建築物やアスファルト舗装などの人工被覆が増加します。
集中豪雨時に降水が地中に浸透することなく河川に直接流れ込むため、短時間で急激に推移が上昇します。
市街地では降った雨(内水)が雨水処理能力を超え、水があふれます現象(内水氾濫)が生じます。
都市問題への取組み
再開発
いくつかの都市では、老朽化した住宅や工場を取り壊して再開発を行い、跡地に新しい商業施設や高級な高層住宅を建設しています。
この再開発地域に、富裕層の人々が流入するジェントリフィケーションという現象が見られます。
この現象は、地価や家賃の上昇でこれまで住んでいた人が出て行かざるを得ないという問題もはらんでいます。
再開発の例
イギリスのロンドン東部のドックランズ
老朽化した造船所や倉庫があるウォーターフロントの再開発として有名
ドックランズ
(Wikipediaより引用)
交通渋滞の改善
パークアンドライド
駅付近に駐車し、目的地まで公共交通機関を利用
ロードプライシング制度
平日日中に都心に自動車で乗り入れると課金