食料問題と食の安全

表記について

世界の食料問題

需給の地域的かたより

世界全体での食料の需要と供給には、地域的なかたよりが著しく見られます。
特にアフリカでは栄養不足の人口の割合が高くなっています。

ハンガーマップ2015(出典:WEP

供給不足の原因

供給不足の原因は様々ありますが、特に次のようなものが挙げられます。

懸念される供給の不安定さ

中国やブラジルなどの経済発展のめざましい国は、生活水準の向上に伴って食料需要が多様化し、食料の輸入量が増加しています。
中国やブラジルは、国内でよく生産される穀物とうもろこしの栽培も懸念されています(ブラジルはさとうきびの栽培でも)。
とうもろこし・さとうきびは、近年注目されている再生可能燃料バイオエタノールの原料です。
今後エネルギー用にとうもろこしが充てられていけば、食料用の供給が減ることになります。
とうもろこし
とうもろこし
さとうきび
さとうきび

発展途上国の食料問題

自然的要因

発展途上国では、次のような自然的要因で農耕が困難になっている場合があります。
サヘル
サヘル

社会的要因

発展途上国では、次のような人為的要因で農耕が困難になっている場合があります。
上記以外にも、大地主による農地の独占や多国籍企業の進出により、現地の小規模農家の成長が阻害されていることも遠因となっています。
農業を経済の中心とする発展途上国でも、十分な食料を生産できていない場合もあります。
そのような国は、植民地時代に輸出用の商品作物を単一栽培するプランテーション農業が独立後も維持され、有効な食料生産への取り組みが遅れてしまっています。

先進国に期待されること

発展途上国の食料不足を解決するために、先進国が果たす役割は非常に大きいものです。
日本の青年海外協力隊や先進国のNGO(非政府組織)による農業技術向上の指導は、食料生産の増加に寄与しています。
また、発展途上国の農産物を不当に安い価格で買い叩くことを避け、適正な価格で取引するフェアトレードの運動も進められています。

先進国の食料問題

国別の事情

一口に先進国と言っても、アメリカ・カナダ・オーストラリアのように食料自給率が高く、世界各国へ輸出する国もあれば、食料自給率は低いが、高い経済力によって食料を輸入で調達できる国もあります。
しかし、いずれの国でも食料が大量に廃棄されるという問題を抱えています。

日本の食料問題

食生活の変化

高度経済成長に伴い、日本の食生活は大きく変化しました。
米・魚・野菜中心の食は、パンや肉類の消費増加で多様なものとなりました。
パンの原料である小麦、家畜の飼料作物のとうもろこしを輸入で調達するようになり、結果、食料自給率が大幅に低下し、日本は世界一の食料輸入国となりました。
何らかの事情で輸入が困難になった場合に備え、食料自給率の向上が必要とされています。
食生活を以前のものに戻せば問題は解決しますが、現実的ではありません。
食料自給率を高めるためには、食に関する知識や関心を向上させる必要があります。
食料自給率(2017年、%)
食料自給率食料
自給率①
穀物粗粒
穀物
豆類野菜
果実
肉類卵類牛乳・
乳製品
食用
穀物②
うち
小麦
フランス13017017218716784726210099118
ドイツ701121211319916462711272203
イタリア636373625342146108749781
日本38286316177938529659
イギリス6894929798464610729190
アメリカ1311191481481151938773103103112
①カロリーベース ②米・小麦・ライ麦など

自給率向上を意識させる言葉

食料自給率の向上を意識させる、次のような言葉があります。

食の安全

「食の安全」を脅かした出来事

世界最大の食料輸入国である日本が、「食の安全」を確保するためには、自国内だけでなく、国際的な協力も必要になります。