水産業

表記について

水産業

好漁場の条件

漁場が好漁場こうぎょじょう(たくさん獲れる場所)になるためには、いくつかの条件が必要です。

自然条件

好漁場の自然条件は、豊富な栄養分と日光があることです。
「栄養分→植物性プランクトン→動物性プランクトン→魚類」という食物連鎖を考えれば、植物性プランクトンが必要とする栄養分と光合成のための太陽光が重要だとよく分かります。
海中の栄養分は重いため、海底に沈んでいます。
栄養分が、海底から上昇する海水の流れ湧昇流によって、太陽光の届く浅い水域まで運ばれれば、好漁場が成立します。
湧昇流は、次の場所で生じます。
大陸棚とバンク
大陸棚とバンク
潮境(潮目)
潮境(潮目)

社会条件

好漁場は、自然条件だけでは成立しません。
消費地の存在や食文化などの社会条件も影響しています。

世界の主要漁場

北西太平洋(ユーラシア大陸東岸地域)

北西太平洋
北西太平洋
成立条件
特色

南東太平洋(ペルー沖)

南東太平洋
南東太平洋
成立条件
ペルー海流と湧昇流
ペルー海流と湧昇流
特色
アンチョビー(カタクチイワシ)
アンチョビー(カタクチイワシ)

北東大西洋(北海周辺)

北東大西洋
北東大西洋
成立条件

特色
タラ
タラ
ニシン
ニシン
トロール漁
トロール漁

北西大西洋(ニューファンドランド島近海)

北西大西洋
北西大西洋
成立条件
特色

中東大西洋

中東大西洋
中東大西洋
成立条件
特色

世界の水産業

世界の水産業の動向

世界各国で水産資源の需要が高まるなか、近年、漁獲量に占める養殖業の割合が増加しました
かつて日本の漁業・養殖業生産量は世界一でした。
現在漁船漁業では中国が1位です。

中国

中国の漁獲量は、1990年代以降に著しい伸びを示しました
今では世界最大の漁獲高になっています。
この伸びの背景には、次の3つが挙げられます。
余談になりますが、中国の漁獲統計の数値は過大に見積もられている疑いがあります。
1990年代と2000年代の接合がいったんの減少と増加という不思議なもので、FAOとの見直しで修正作業が入ったものと思われます。

中国のフナ(コイ科)の養殖

ペルー

ペルーの漁獲量は、大きく増減しています
変動幅が大きいのは、漁獲量の大部分を占めるアンチョビー(カタクチイワシ科)の豊漁不漁によって起こされています。
1種の魚類に依存するため、漁獲量に大きく影響します。
このような依存は、1960年代から始まりました。
アンチョビーの漁獲量は、えさとなるプランクトンの量を左右する湧昇流にかかっています。
1970~1980年代は、湧昇流の発生を弱めるエルニーニョ現象に見舞われ、アンチョビーの不漁となりました。
平常時のペルー沖
平常時のペルー沖
エルニーニョ現象
エルニーニョ現象
ラニーニャ現象
ラニーニャ現象

日本

日本の漁獲高は、1980年代まで上位を占めましたが近年減少傾向にあります
これは日本人が魚類を食べなくなったわけではありません。
むしろ、日本の水産物の消費量は、1960年代より増加しています。
日本の漁獲高の減少は、海面漁業(遠洋・沖合・沿岸)の衰退や輸入の増加に理由があります。

漁業の衰退

日本の水産業は、養殖を除いて全て漁獲量が減少しています
1970年代
遠洋漁業は、1973年を最後に激減しています。
これは、次の2つを背景に操業可能な漁場が縮小したからです。
日本の排他的経済水域
日本の排他的経済水域
1980年代後半
遠洋漁業の減少後、沖合漁業がその減少分を補うように急増しました。
しかし、次の2つを背景にこの漁業も減少しました。
マイワシ
マイワシ
近年
沿岸漁業は、沿岸部の埋立ての増加で停滞状態にあります。

輸入量の増加

漁業の衰退の一方で、日本の水産物の消費量は増加しています。
現在は水産物の半数以上を輸入に頼り、アメリカ合衆国と並ぶ世界的な輸入国になっています。