樹木・森林の分類、木材の用途
樹木の分類
樹木は、葉の形で大きく広葉樹と針葉樹に分類されます。
広葉樹(左)・針葉樹(右)
森林の分類
森林は分布・特徴から次の3つに分けられます。
木材の用途
木材の用途は次の2つに分けられます。
パルプ
木材を機械的あるいは化学的に処理してつくられる粗繊維物質
木材パルプ
森林ごとの分布と特色
熱帯林
熱帯林とは、常緑広葉樹から成る熱帯雨林、常緑広葉樹に落葉広葉樹が混じる熱帯モンスーン林、海岸沿岸部のマングローブ林などを指します。
マングローブ
熱帯・亜熱帯の海岸・河口の汽水域となる地域に広く分布する植物
分布
熱帯雨林気候のアマゾン川流域、東南アジア、コンゴ川流域に分布します。
特にアマゾン川流域の熱帯林はセルバと呼ばれます。
特色
熱帯林は多種多様な樹種が混在して密集し、ほしいと思う樹種の大量取得が困難です。
熱帯林の伐採用途は建築用材・合板をはじめ様々ですが、硬木のため、紙などの原料(パルプ)には不向きです。
利用樹種
- ラワン:合板・建築用材
- チーク:船舶材・建築材
- マホガニー:高級家具材
伐採の目的
焼畑農業・薪炭材
発展途上国では、焼畑農業や薪炭材のために伐採されています。
例えば、インドとエチオピアの木材用途のグラフを見ると、薪炭材の割合が高いことがわかります。
開発
ブラジルなどの発展途上国では、農場・牧場の開発や鉱山開発のために熱帯林が大規模に伐採されています。
開発による熱帯林の破壊
エビの養殖
東南アジアのマングローブ林は、エビの養殖池をつくるために伐採されています。
養殖されたエビは、多くが日本へ輸出されています。
養殖地は、生産量が減少すると放置され、また別の場所につくられます。
マングローブ林
ブラックタイガー
問題点
熱帯林の伐採は、運搬のために周囲の関係ない木々まで伐採しなくてはなりません。
また、焼畑農業が拡大することで過度に伐採され、熱帯林の破壊や砂漠化が深刻化しています。
森林の破壊は回復に時間がかかり、生態系に大きな影響を与えます。
現状のまま森林の面積が減少すると、二酸化炭素吸収量が低下し、地球温暖化に繋がると危惧されています。
森林の増減
地域 | 1990年 | 2000年 | 2010年 | 2015年 | 1990~2015年の増減 | 割合 |
---|
アジア | 571,685 | 574,170 | 598,013 | 603,316 | 31,630 | 5.5 |
ヨーロッパ | 991,200 | 998,953 | 1,010,533 | 1,012,249 | 21,049 | 2.1 |
アフリカ | 1,062,101 | 1,030,158 | 1,001,148 | 982,942 | -79,159 | -7.5 |
北アメリカ | 348,291 | 347,820 | 347,340 | 347,134 | -1,158 | -0.3 |
中央アメリカ | 104,534 | 100,992 | 98,131 | 97,221 | -7,313 | -7.0 |
南アメリカ | 973,811 | 922,794 | 870,304 | 856,738 | -117,072 | -12.0 |
オセアニア | 184,812 | 183,162 | 180,848 | 184,268 | -544 | -0.3 |
世界 | 4,236,430 | 4,158,050 | 4,106,320 | 4,083,870 | -152,560 | -3.6 |
温帯林
熱帯林と亜寒帯林(冷帯林)との間に発達している樹林で、南北で樹種の構成が異なります。
分布
温帯に広く分布します。
特に温帯の南部には常緑広葉樹が、冷涼な北部には落葉広葉樹と針葉樹の混合林が分布します。
特色
温帯の地域は人類の開発の歴史が比較的早かったこともあり、天然林(伐採などで人の手が入っても自然の力で更新している森林)はほとんど残らず、人工林ばかりです。
利用樹種
常緑広葉樹のカシ・クス・シイ、落葉広葉樹のブナ・ナラ・ケヤキ、針葉樹のマツ・スギ・モミ、硬葉樹のコルクガシ・オリーブなど幅広く存在します。
問題
開発が著しいこともあり、近年では酸性雨の影響で立ち枯れも目立ちます。
亜寒帯林(冷帯林)
亜寒帯林(冷帯林)とは、いわゆる針葉樹林のことです。
原生林(天然林の中でも全く人の手が入っていない、一度も伐採されたことのない森林)で、大規模に同種の針葉樹が広がる地域を特にタイガと呼びます。
タイガ
分布
カナダ・ロシア・北欧などの亜寒帯(冷帯)に分布します。
特色
亜寒帯(冷帯)は生育できる樹種が少ないため、亜寒帯林(冷帯林)の多くは、一種の針葉樹からなる森林(純林)です。
ほしい樹種の大量取得が容易です。
加えて、針葉樹は軟木のため、パルプ材として高い利用価値があります。
このような理由から、亜寒帯林(冷帯林)が分布するカナダ・ロシア・北欧は、木材の輸出が盛んです。
木材の生産
国名 | 万?(2020年) |
---|
アメリカ | 429.7 |
インド | 350.67 |
中国 | 337.14 |
ブラジル | 266.29 |
ロシア | 217 |
カナダ | 132.18 |
インドネシア | 121.95 |
エチオピア | 117.37 |
木材の輸出
国名 | 万?(2020年) |
---|
ロシア | 4,782.8 |
カナダ | 3,281.99 |
ニュージーランド | 2,357.64 |
ドイツ | 2,297.34 |
チェコ | 2,189.13 |
スウェーデン | 1,514.54 |
フィンランド | 948.2 |
ラトビア | 695.34 |
木材の輸入
国名 | 万?(2020年) |
---|
中国 | 9,340.15 |
オーストリア | 1,441.74 |
ドイツ | 1,148.7 |
ベルギー | 873.67 |
イギリス | 836.86 |
スウェーデン | 798.76 |
イタリア | 737.17 |
日本 | 722.94 |
日本の林業
森林面積と自給率
日本は国土の2/3が森林です。
かつては高い森林率を活かして、木材をほぼ自給していました。
しかし、近年は安価な輸入材の増加で、木材自給率が低下しました。
日本の土地利用(2019年)
耕地率(%) | 牧場・牧草地率(%) | 森林率(%) | 農民1人あたり耕地(ha) | 就農率(%) |
---|
10.4 | 1.6 | 68.4 | 1.7 | 3.4 |
日本の木材輸入先
以前の日本は、東南アジア諸国から丸太を輸入していました。
1980年代、インドネシアが森林の保護や合板などの加工品の輸出を目的に、丸太の輸出を規制しました。
1980年代後半、マレーシアも丸太の輸出を規制し、日本の木材輸入に占める東南アジアの割合は減少しました。
合板などに加工すると付加価値をつけて輸出可能
近年、日本の木材輸入先は多角化しています。
日本の林業の課題
現在はやや回復傾向にありますが、日本の木材自給率が低下した理由には、次のことがあげられます。
- 海外からの安価な木材の輸入
- 林業従事者の減少と高齢化
1980年代以降、日本の木材自給率とともに林業の従事者は減少を続けています。
間伐などの管理が不十分な森林が増加しています。