工業の発達と立地

表記について

工業の発達

工業とは

工業とは、原材料(農林水産物や鉱山資源など)を加工し、有用な製品をつくる産業です。
加工する過程で、技術・労働力・動力などが必要になります。

工業とコスト

人が原材料を加工するのは、付加価値によって利益を生むためです。
そして、利益を多くする単純な方法は、コストを抑えることです。
原材料費以外に、次のことにコストがかかります。

工業の立地

立地

次のことにコストがかかることを確認しました。
「輸送費」「人件費」をどう抑えて利益を出すかで、工業立地、つまり工場をどこに置くかが決定します。
おおまかに次の表のようになります。
立地型 工業 特徴
原料指向型 金属・セメント・パルプ 加工化することで、重量が大幅に減る原料を使用
電力指向型 アルミニウム 電気エネルギーを大量消費
市場指向型 ビール・清涼飲料・印刷・出版 どこでも入手可能な原料を使用
労働力指向型 繊維・組立 労働力への依存度が大きい
臨海指向型 鉄鋼・石油化学 海外からの輸入原料に依存
臨空港指向型 エレクトロニクス 小型・軽量で高付加価値な製品を生産

原料指向型

立地の理由

輸送費は、重い荷物ほどかかります。
もし原材料が加工される過程で軽くなるもの(重量減損原料)なら、可能な限り産地近くで加工すべきです。
こうした立地が、原料指向型です。
原料指向型の代表的な業種は、金属工業・セメント工業、製紙業・パルプ業です。

金属工業・セメント工業

セメントの主要原料は、 石灰岩 です。
この岩は不純物を含むため、セメントになると軽くなります。
産地近くで加工し、輸送した方がコストがかかりません。
このことは、鉄鋼業など金属工業にも当てはまります。
セメント
セメント
*この粉末に水などを混ぜたものがコンクリート
ミキサー車
ミキサー車
*コンクリートを運ぶ車

製紙業・パルプ業

紙は、木材からパルプという繊維を取りだして作ります。
セメント同様、製紙業・パルプ業は原料指向型の立地です(例:北海道)。
ただし、製紙業・パルプ業は次の条件を優先することがあり、必ずしも原料指向型ではありません。
古紙パルプ配合率100%の用紙のマーク
R100
*古紙パルプ配合率100%の用紙のマーク

電力指向型

立地の理由

アルミニウムはボーキサイトという鉱石から取り出されます。
取り出す過程で電気分解という工程があり、大量の電気エネルギーが必要になります。
安価に電力を供給できる場所を求めた立地が、電力指向型です。
アルミニウム製錬では、特に水力発電が頼られました

日本のアルミニウム製錬

かつて日本は世界でも有数のアルミニウム精錬国でした。
しかし、電力費の高騰で徐々に衰退し、水力発電に頼っていた静岡県蒲原かんばら工場も2014年3月に閉業し、現在の日本でアルミニウムの生産はなくなりました
リサイクルによる再生あり
現在、日本で使われるアルミニウムは オーストラリア からの輸入に最も頼っています。

市場指向型

立地の理由

原材料がどこでも得られるもの(普遍原料)であれば、消費地に近い場所で加工した方が輸送費を抑えられます。
また、情報などは人が多く住む消費地ほど大量に速く入手できます。
この理由で大都市近郊に立地するのが、市場指向型です。
市場指向型は、原材料で水が最も重量を占めるビール・清涼飲料の製造業、情報を扱う印刷業・出版業でみられます。

ビール・清涼飲料

ビール・清涼飲料の原材料は、水が最大の重量を占めます。
こだわりの水でなければ、水は普遍原料と言えます。
そして、缶・ビンに詰めれば重量が増えるので、消費地近くで製造する方が輸送費を抑えられます。
日本では東京・札幌・福岡など大都市近郊に工場が立地します
ただし、飲料全般が市場指向型ではないので、注意が必要です。
例えば、ワインは原材料のブドウが腐りやすく、水を使わないため原料指向型になり、また、日本酒はその土地特有の水と結びつきが強く、用水指向型になります。

印刷業・出版業

情報は量・速さが勝負です。
また、これらを印刷して書籍化すると重量がかなり増えます。
情報が得やすく輸送費が抑えられる大都市近郊に、印刷業・出版業は展開します。

労働力指向型

立地の理由

手作業や比較的やさしい家電の組み立て(ローテク産業)では、大量の労働力が必要になります。
人件費を安く抑えれば、それだけ利益が出せます。
安価な人件費を求めた立地が、労働力指向型です。
近年、企業の工場が海外へ移転するのは、労働力指向型だからです。

臨海指向型

輸入原料を使用する工業は、海上輸送に便利な臨海地域に工場を立地させます。
日本は資源のほとんどを海外に依存しているので、鉄鋼業や石油化学工業が臨海指向型です。
石油コンビナート
石油コンビナート

臨空港指向型

軽量で小さく、高付加価値である電子部品は、輸送費が高い空輸で素早く組立工場まで運んだ方が利益を出します。
このように高い輸送費を度外視できる工業は、臨空港指向型になります。
電子回路
電子回路