世界の貿易

表記について

貿易の概説

貿易とは

国は、自国が得意な生産物を他国に輸出し、得意でない生産物を輸入に頼ります。
このように国同士が生産を分担することを国際分業と言い、そして、生産物を取引することを貿易と言います。
今日、第3次産業の情報・通信などを取引するサービス貿易も増えてきました。

先進国と途上国の貿易

貿易は、国同士が取引する産品の組み合わせで、次の2つに分けられます。
一次産品
工業製品として加工が加えられていない商品

水平貿易

水平貿易は、先進国間で多く、で工業製品・サービスなどを輸出入し合う貿易です。
水平貿易の額は大きく、世界貿易の半分を占めています。
水平貿易
水平貿易

垂直貿易

垂直貿易は、途上国が鉱産物や農水産物などの一次産品を先進国に輸出し、先進国がその一次産品をもとに工業製品を輸出する貿易です。
垂直貿易では、付加価値の高い工業製品を輸出する先進国が多くの利益を取得でき、一次産品を輸出する途上国では国の発展が見込めませんでした。
このことは、先進国の多い北半球と途上国の多い南半球の経済格差「南北問題」を引き起こしました。
近年、NIEsやASEANに属す途上国では、輸出品のなかで工業製品が占める割合が増えています。
垂直貿易
垂直貿易

貿易額

中国・アメリカ・EU

次のグラフを用いて解説します。

中国

世界最大の輸出額は、2018年時点で中国です。
以前までアメリカが世界最大の輸出額

アメリカ

アメリカは、お金をもつ人が多くて購買力が強く、かなりの輸入超過(輸入額>輸出額)で世界最大の貿易赤字国です

EU

貿易額の大きい中国やアメリカも、EU(ヨーロッパ連合)には敵いません。
構成する国々それぞれの貿易額が大きいので、自然とEUの貿易額も大きくなります。
例えばNAFTAなど、EU以外の国々も経済協力を図って貿易額を上げています。

日本

輸出超過から輸入超過へ

次の日本のグラフを用いて解説します。
日本やドイツなどの工業製品を輸出する国は、輸出超過(輸出額>輸入額)で貿易黒字になりやすいです
1980年代から日本の輸出超過は顕著になりました。
この過程で、日本とアメリカの間には貿易摩擦が生じました。
ところが日本の貿易は、2011年の原発停止以降に、輸入超過(輸入額>輸出額)に転じました
これは原発停止による化石燃料の輸入増などが原因です。

輸入超過の内訳

下の表を見ると、日本が輸入超過国から原油・石炭・天然ガスを輸入していることが分かります。
日本が資源を多く輸入する国は日本の輸入超過国になります
他にもイタリアからは高級服飾・高級ブランド品を輸入したりと、意外な輸入超過の背景があります。

日本の主な輸入超過国(単位:億円)
国名 輸入 輸出 主な輸入品
アラブ首長国連邦 30,462.8 8,717.3 原油
インドネシア 23,789.1 17,430.8 液化天然ガス、原油、石炭
サウジアラビア 37,329.5 4,541.4 原油
中国 191,936.5 158,977.4 電気機器、衣類
マレーシア 20,910.2 15,386.6 液化天然ガス、電気機器
イタリア 12,603.1 5,185.6 高級服飾、高級ブランド品
フランス 12,198.2 7,788.0 ワイン
カナダ 12,949.9 10,294.2 石炭、木材
チリ 8,003.4 2,201.6 銅鉱、サケ・マス
ブラジル 7,612.0 4,415.2 鉄鉱石、鶏肉、コーヒー豆
オーストラリア 50,527.9 18,862.3 石炭、液化天然ガス、鉄鉱石、肉類
2018年

最大の輸出国・輸入国

戦後、日本の最大の輸出国・輸入国はアメリカでした。
近年、最大の輸出国・輸入国は中国になりました。
日本の最大の輸出入国(単位:百億円)
1990年 2000年 2010年 2018年
最大の輸出相手国 アメリカ(1,356) アメリカ(1,536) 中国(1,309) 中国(1,590)
最大の輸入相手国 アメリカ(759) アメリカ(778) 中国(1,341) 中国(1,919s)
2018年

貿易依存度

貿易依存度とは、国内総生産(GDP)に対する輸出額・輸入額の割合です。
人口が少なく、国内市場が小さい国は、貿易依存度が高くなります
主要国の貿易依存度
貿易依存度(%)
輸出 輸入
14.3 14.8
シンガポール 118.4 101.4
中国 20.5 15.1
韓国 38.2 31.7
マレーシア 67.2 59.4
オランダ 62.8 56.6
ドイツ 39.4 31.3
フランス 20.4 23.3
アメリカ 8.3 12.5
ブラジル 10.8 10.1
2015年

世界貿易の変遷

GATTとWTO

貿易の自由化の推進

第二次世界大戦の要因の1つは、過度な保護貿易と考えられています。
保護貿易を解消し、自由貿易を推進して政治問題を解決する体制づくりが目指されました。
保護貿易
保護貿易
1948年、GATT(関税および貿易に関する一般協定)発効
関税の引き下げなど貿易の障壁をなくすことを目指す協定
1986~94年、GATTウルグアイラウンド
GATTが「モノ」のみを対象にしていたので、「サービス貿易」「知的財産権」に関する協定を作成
牛肉・オレンジの輸入自由化(1991年)
日本は毎年一定比率での米の輸入義務を約束

GATTの改組

1995年、WTO発足
GATTウルグアイラウンドの結果、GATTを改組して発足した国際機関
「サービス貿易」「知的財産権」も対象に含め、紛争処理能力などを強化
WTOロゴ
WTOのロゴ

特定の国・地域間の協定

WTOの加盟国は、2021年時点で160ヵ国以上です。
WTOの意思決定は加盟国の全会一致を原則としたため、加盟国が増えるにつれて機能不全に陥りました。
このため、特定の国・地域間で例外的に協定を結び、自由貿易を推進するようになりました。
FTA・EPA
FTA・EPA

FTA

FTA自由貿易協定
特定の国・地域間で、関税などの貿易の障壁を低減・撤廃を目指す協定
代表的なFTA
1994年、NAFTA北米貿易協定)発効
アメリカ合衆国・カナダ・メキシコが締結した自由貿易協定
2020年、この協定に代わってUSMCAが発効
1995年、MERCOSUR南米南部共同市場)発効
アルゼンチン・ウルグアイ・パラグアイ・ブラジルが締結した、域内の関税を緩和・撤廃する同盟
のちに正加盟国になったベネズエラは2016年以降に加盟資格を停止
USMCA
United StatesーMexicoーCanada Agreement

EPA

EPA
特定の国・地域間で、関税などの貿易の障壁を低減・撤廃することに加えて、投資・人的交流の円滑化や知的財産の保護を目指す協定

公正な貿易を目指して

発展途上国では、受け取る賃金が不当に安くされ、労働者の権利が守られないことが多くあります。
先進国が発展途上国の農産加工品などを適正な価格で直接購入する貿易フェアトレード があり、現地の人々の生活水準の向上が目指されています。

貿易摩擦

日本・アメリカの例

戦後、日本はアメリカに対する自動車や電気機器の輸出を伸ばしていきました(貿易黒字)。
安価な日本産に押され、アメリカの日本への輸出は少なくなりました(貿易赤字)。
1980年代、日米間の貿易収支の不均衡は、国家間の対立貿易摩擦を起こしました。
貿易摩擦
貿易摩擦
ジャパンバッシング
ジャパンバッシング
(訳:日本車を売りたければアメリカで作れ)
アメリカは、日本に対して輸入の自由化を迫り、貿易収支の不均衡を解消しようとします。
一方、日本は「日本の輸出=相手国の生産圧迫」という貿易摩擦の根本的問題を回避するため、アメリカに工場を建設して現地生産するようにしました。
貿易摩擦は、日本の対策のように対外直接投資で解消しようとされます。復習
貿易摩擦の解消
貿易摩擦の解消

産業の空洞化

貿易摩擦の解消は、対外直接投資、つまり他国に工場・支店、子会社を建てることで試みられます。
この解消方法では、自国の産業の空洞化が生じ、自国の雇用が減るなどの問題を起こします。
産業の空洞化
産業の空洞化