室町時代の生産活動

表記について
概要
室町時代には、生産活動において様々な発達が見られました。農業では三毛作が可能となり、また、商工業では行商人の種類が増加しました。行商人の種類増加の背景には、商品の種類増加が考えられます。生産活動の発達は相互作用で生じてきました。そして、これら発達は鎌倉時代を前提としています。

生産活動の発達

農業の発達

竜骨車
ペダル式の水車で、江戸時代前期に使用されたと紹介されるが、室町時代には既にありました。
ジャポニカ米(左)・大唐米(右)
大唐米は鎌倉時代に輸入され、一部で普及しました。室町時代には西国で普及しました。

商工業の発達

特産品

各地で米と並ぶ生活必需品「塩」の製塩が行われました。
製塩方法には、人力による揚浜あげはま と、潮の干満を利用する入浜塩田いりはまえんでん がありました。

揚浜

入浜塩田

市場

応仁の乱後、月6回の市六斎市が開かれるようになりました。
加えて、常設の小売店見世棚が大都市以外でも一般化しました。

見世棚

商人

木製の荷箱を背負った行商人連雀れんじゃく 商人や、天秤棒てんびんぼうに商品を下げた行商人振売ふりうりが増加しました。
女性の行商人の活躍も目立ち、炭・薪を売る大原女おおはらめ や、京都桂川かつらがわ鵜飼うかいで得たあゆ を売る桂女かつらめ京都で 活動しました。

連雀商人

振売

大原女

桂女

鵜飼い

組合

手工業者や商人の組合が、数・種類ともに増加しました。
座は、神社と結び神人じにんの、朝廷と結び供御人くごにん の称号を得て、関銭の免除・独占的販売権を認められることがありました。
神人には、石清水八幡宮いわしみずはちまんぐうを本所とする 大山崎おおやまざき油座や、北野神社を本所とする麹座 こうじざ がありました。
本所
特権を与えている組織
大山崎油神人
荏胡麻えごまからの製油や販売を独占

荏胡麻油

貨幣経済の発達

貨幣には宋銭と、新たに日明貿易で流入した明銭が使用されました。
明銭には、最も多く使用された永楽通宝の他に、洪武通宝がありました。

明銭(永楽通宝)
農村でも年貢・公事・夫役を銭納することが多くなりました。
貨幣のさらなる需要増大から、国内の民間業者が鋳造した粗悪な私鋳銭しちゅうせん も、市場を流通するようになりました。
取引で粗悪な貨幣を嫌い、良質な貨幣を選別する撰銭えりぜに がよく行われました。
選別は大変手間で、時にいざこざを起こして円滑な流通を妨げました。

私鋳銭
撰銭を規制するため、たびたび撰銭令が出され、良銭・悪銭の基準や混入比率などが定められました。

金融業の発達

質屋と高利貸を兼ねる土倉や、酒造業と高利貸を兼ねる酒屋がありました。
幕府は土倉に土倉役、酒屋に酒屋役という営業税を課しました。

運輸業の発達

水上運輸

鎌倉時代の問丸が一般の卸売りも兼ねて発展した問屋といや が増加しました。
問丸
鎌倉時代、港・河川に居住して年貢などの保管・輸送にあたった業者

陸上運輸

京都までの輸送では、馬上に荷物を載せて運搬する馬借ばしゃく や、荷車を牛馬に引かせる車借しゃしゃく などの業者が活躍しました。
馬借・車借
関所の通行時に払う関銭に苦しみ、関所の新設に反対して時に蜂起

馬借

車借