概要
「身分」とは、説明が非常に難しい言葉です。例えば、江戸時代の「身分」には武士・百姓・商人などを挙げられますが、果たしてこれらは「職業」と何が違うのでしょうか。「身分」の意味、単なる「職業」との違いを理解することは、江戸時代を捉えること、まだ明治時代のいわゆる「四民平等」の理解に大いに役立ちます。
人と身分
身分とは
江戸時代、①大名・旗本②農民・漁民③僧侶・神職など様々な職業がありました。
①は「武士」、②は「百姓」、③は「宗教者」と分類され、分類ごとに、例えば「武士-軍事・政治」「百姓―生産」と、果たすべき役割が固定されました。
役割以外、例えば「百姓」が軍事に手を出すことは固く禁止されました。
語弊もありますが、江戸時代の「身分」とは、役割の固定された上記分類を指します。
身分(役割の固定)
身分ごとの役割が固定されているに過ぎず、身分の変更は可能でした。
職と役割の固定―庶民武芸の流行と禁止
幕末、日本沿岸に外国船が近づき、沿岸警備が必要となりました。町人も警戒心を強め、武術の稽古が流行しました。1843年に示達された触書には、「町人どもは本来、その産業を守り、武術稽古などを致さざるはずのところ、当時、世情の武備が盛んになるに従い、町人どものなかに武術の稽古をする者がいる」と載ります。
様々な身分と武士
身分は、武士・百姓・町人・宗教者・医者など多岐にわたりました。
大部分の人は、「武士」「百姓・職人・商人」のいずれかの身分にあり、このような江戸時代の社会状況は士農工商と呼ばれました。
武士は大名・旗本・御家人など複数の階層から構成される上位の身分で、帯刀・苗字・切捨御免などの特権をもちました。
切捨御免
下位の身分から無礼を受けた時、斬殺しても処罰されないこと
武士
下位の身分
様々なある身分のなかで、次の2つは下位の身分とされました。
- かわた(長吏)
皮革の製造・わら細工、時に死牛馬の処理・行刑役に従事
死・血に携わり汚れを帯びるため、えた(穢多)とも呼称
- 非人
村などから排除された乞食で、芸能・掃除・物乞いに従事
かわた・非人は居住地・衣服などの点で、他身分と区別されました。
乞食
家と戸主の権限
武士や有力な百姓・町人の家では、家の筆頭戸主に強い権限がありました。
戸主の立場や家督(家・財産など)は長子が相続し、原則的に女性は相続しませんでした。
家督
時代によって意味が異なり、鎌倉時代の「家督」は一門の首長のこと