概要
イスラームは、ユダヤ教・キリスト教と同じく一神教です。アラブ人のイスラーム教徒は、7世紀から約1世紀の間に東西にわたる大帝国ウマイヤ朝を築いていきます。ウマイヤ朝ではアラブ人と非アラブ人が区別され、非アラブ人はイスラームに改宗されても差別をうけました。
イスラーム世界の成立
アラビア半島と中継貿易
6世紀後半、東西を結ぶオアシスの道は、ササン朝とビザンツ帝国の争いで途絶えました。
また、紅海を通る貿易も同じ理由で途絶えました。
6世紀後半の西アジア
そのため、東西を行き来する各種商品は、アラビア半島を経由するようになりました。
都市メッカの商人が中継貿易を担って利益をあげました。
イスラームの成立
610年頃、商人出身の
ムハンマドは、唯一神アッラーの言葉を預かり、預言者であると自覚しました。
以前から信仰されている多神教にかわり、一神教のイスラームを唱えました。
イスラームは富の独占を批判したため、メッカの商人から迫害を受けました。
622年、ムハンマドは信者を率いて都市メディナに移住するヒジュラ(聖遷)をおこないました。
メディナには、イスラーム教徒(ムスリム)の共同体ウンマが形作られました。
なお、イスラーム暦では、ヒジュラがおこなわれた年をイスラーム暦元年としています。
630年、ムハンマドはメッカを征服し、多神教の神殿であったカーバ神殿をイスラームの聖殿に定めました。
以降、アラビア半島のアラブ人にイスラームが広がっていき、諸部族の統一が実現されました。
カーバ神殿
メッカ
にあるイスラームの聖殿
イスラームでは偶像崇拝を禁止するため、聖殿に定める際に神殿の像を全て破壊
アラブ人
ここでは「アラビア半島を原住地とする人々」の意
イスラーム世界の拡大
ムハンマドの死後(正統カリフ時代)
ムハンマドの死後、彼の義父アブー=バクルがイスラームの指導者カリフに選ばれました。
初代カリフのアブー=バクルから4代目のカリフのアリーまで、信徒の間から選ばれた指導者を
正統カリフと呼びます。
4人の正統カリフの指導のもとで、征服活動ジハード(聖戦)が活発におこなわれ、非アラブ人との争いが続きました。
642年、
ニハーヴァンドの戦い
イスラームの勢力がササン朝ペルシアを破った戦い
この戦いの後、ササン朝ペルシアは滅亡
正統カリフの時代には、ビザンツ帝国からシリア
やエジプトを奪いました。
また、イェルサレム
がイスラームの支配下に入りました。
イスラーム教徒はこれら征服地に移住し、軍営都市ミスルを建設しました。
イスラーム世界の分裂
正統カリフ時代の征服活動は、イスラームに内部対立を招きました。
4代目カリフのアリーが暗殺され、カリフの地位は自称する形でシリア総督のムアーウィアに継がれました。
661年、ムアーウィアがウマイヤ朝を首都ダマスクスに開き、カリフの地位はウマイヤ朝のもとで世襲制となりました。
シーア派
4代目カリフのアリーの子孫(アリーと預言者ムハンマドの娘の子孫で、預言者の血を引くため)だけに指導者カリフの資格があるとする、イスラーム教徒の少数派
スンナ派
ウマイヤ朝をはじめとするイスラーム教徒の多数派
ウマイヤ朝の領土拡大
8世紀初め、東方では中央アジアのソグディアナやインド西部を征服しました。
また西方では、711年、イベリア半島の西ゴート王国
を滅ぼしました。
イベリア
半島を制圧した後、さらにピレネー山脈を越えてフランク王国
に侵入しました。
ソグディアナ
サマルカンドを含むアム川・シル川に挟まれた地域の古代の呼称
732年、
トゥール・ポワティエ間の戦い
ウマイヤ朝がフランク王国の宮宰カール=マルテル
に敗れ、ウマイヤ朝の勢力がピレネー山脈の南まで後退
イスラーム教徒と西ヨーロッパのキリスト教徒との戦いという側面あり
ウマイヤ朝の財政基盤
ウマイヤ朝の財政は次の2つを基盤としました。
- ハラージュ
土地を所有する人に課せられる税(地租
)
- ジズヤ
納税関係なく、人に課せられる税(人頭税
)
これらの税は、イスラーム教徒のアラブ人に課せられず、被征服民(非アラブ人)のみ課せられました
。
被征服民はユダヤ教・キリスト教の信仰を認められましたが
、イスラームに改宗しても税を免除されませんでした
。
当初のイスラームはアラブ人主体であり、非アラブ人が差別されたため
イスラームの基礎知識
イスラームの教え
聖典
『
コーラン』
ムハンマドが神から預かった言葉を、ムハンマドの死後に集成したもの
ユダヤ教・キリスト教との関係
ユダヤ教・キリスト教は、イスラームと同じ神を信じる宗教という位置づけ
その他イスラームの重要事項
一神教
他の神の存在はなく、ただ一つの神アッラーを信仰すること
偶像崇拝の禁止
アッラーの像を絶対に作ってはならず、また、他宗教の神像も破壊
このため、カーバ神殿には以前の多神教の像もアッラーの像も存在しない
預言者
モーセもイエスも神の言葉を預かった預言者だが、最も優れた最後の
預言者はムハンマドであること
六信
イスラーム教徒(ムスリム)が信じるべき6つのこと
五行
イスラーム教徒(ムスリム)に求められる5つの行動規範
六信
五行
- 信仰告白
アッラーを唯一神と信じることを告白
- 礼拝
1日に5回礼拝すること
- 喜捨
貧民に自分の財を与えること
- 断食
ヒジュラ暦第9月(ラマダーン月)に飲食を断つこと
- 巡礼
生涯に最低一度メッカを訪れること