概要
シリア・パレスチナ地方の諸民族は、古くから交易で活躍しました。特にフェニキア人は、レバノン杉を船材とする帆船に乗り、ブリテン島やバルト海沿岸までの遠路を往復しました。フェニキア人の文字は、アルファベットの起源になりました。同地域で成立したユダヤ教の『旧約聖書』とともに、文化史上の功績は大きいです。
東地中海世界
「海の民」
地中海東岸のシリア・パレスチナ地方は、海陸交通の要衝でした。
前1500年頃から、セム語系のカナーン人が交易で活躍しました。
前1200年頃、系統不明の諸民族集団「海の民」が、ギリシア・エーゲ海方面から進出してきました。
「海の民」は、鉄製武器や戦車を用いたヒッタイトやエジプトを後退させました。
上記の混乱に乗じ、地中海東岸ではセム語系の3民族が活動を始めました。
オリエントの都市
アラム人
アラム人は、前1200年頃からダマスクスを中心に、内陸都市を結ぶ中継貿易(内陸貿易)で活躍しました。
結果、アラム語は国際商業の言語として広く使われ、アラム文字はヘブライ文字・アラビア文字などの文字の起源になった。
フェニキア人
フェニキア人は、シリア沿岸にシドン・ティルスなど都市国家や、北アフリカのカルタゴなど植民都市を建設し、地中海貿易で活躍しました。
フェニキア人がつくった線上の表音文字フェニキア文字は、のちにギリシア文字になり、今日のアルファベットの起源になりました。
フェニキア人の船
ヘブライ人
遊牧民のへブライ人は、前1500年頃パレスチナに定住し、一部はエジプトの移住しました。
しかし、その者らはエジプト新王国のファラオによる圧政に苦しみました。
前13世紀、
出エジプト
ヘブライ人が指導者モーセに率いられてエジプトを脱出したこと
モーセ
前1000年頃、ヘブライ人はパレスチナに王国(首都イェルサレム)を建て、国王ダヴィデ王とその子ソロモン王のもとで栄えました。
ソロモン王の死後、国は北のイスラエル王国と南のユダ王国に分裂しました。
ヘブライ人の動向
イスラエル王国
前722年、イスラエル王国はアッシリア王国に滅ぼされました。
ユダ王国
前586年、ユダ王国は新バビロニアに滅ぼされました。
バビロン捕囚
ユダ王国のヘブライ人が、新バビロニアの都バビロンに連行された事件
連行された人々は、彼らだけが唯一神ヤハウェの救済対象で(選民思想)、やがて救世主(メシア)が出現するという考えをもち始めました。
このような考えを抱く彼らは、やがてユダヤ人と呼ばれるようになりました。
前538年、捕囚から解放された彼らは、イェルサレムにヤハウェの神殿を再建し、『旧約聖書』を教典とするユダヤ教が確立されました。
ディアスポラ
「分散」の意で、パレスチナ以外にユダヤ人が離散したこと
ヤハウェの神殿
オリエント世界
アッシリア王国
前2000年頃に北メソポタミアにおこったアッシリア王国は、まず古バビロニア王国に、そして前15世紀からミタンニ王国に服属しました。
前14世紀、アッシリア王国は独立を回復し、鉄製武器と戦車・騎兵隊を用いて、前7世紀前半、全オリエントを征服し、最初の「世界帝国」になりました。
ニネヴェ
前8世紀末からアッシリア王国の首都となった都市
アッシュル=バニパル
アッシリア王国の最大版図を達成し、大図書館を造った国王
バニパル王の獅子狩り
アッシリアの国王は、強大な専制君主で政治・軍事・宗教を自ら管理しました。
国内を州に分けて駅伝制を敷き、各地に総督を置いて統治しました。
しかし、アッシリア王国は重税と圧政によって反抗を招き、前612年に崩壊しました。
アッシリア王国の最大版図
オーパーツ?―アッシリアの水晶レンズ
アッシリアのニムルドから、直径4.2㎝、幅3.45㎝の水晶レンズが見つかりました。本の上に置くと文字を拡大して見ることができるそうで、当時の技術水準を超えたオーパーツの1つに数えられています。しかし、象嵌に使用されたもので、太陽の光を集めるようなものではなかったという説が有力です。レンズとしての機能は偶然の産物とされています。
4王国
アッシリア王国崩壊後のオリエントには、次の4つの王国が分立しました。
新バビロニア
最盛期の王ネブカドネザル2世の時、バビロン捕囚を実行
4王国の分立(前6世紀)
リディア貨幣
年表