概要
ギリシア人は、明るく合理的で人間中心的な文化を創造しました。その独創的な文化遺産は、後のヨーロッパにおいて近代文明の模範となりました。ギリシア文化の土台は、市民が対等に議論できるポリスの精神風土にありました。
文学・哲学・劇・言論
文学
ギリシア神話では、ゼウスを主神とするオリンポス12神が崇拝されました。
この神話は多神教で、神は人間と同じ姿や感情を持つとされました。
ゼウス像
ギリシア文学は、この神々と人間との関わりをうたった次の叙事詩から始まりました。
- ホメロス著の、トロイア戦争での英雄の活躍を描く『イリアス』『オデュッセイア』
- ヘシオドス著の、神々の系譜を語る『神統記』、勤労の尊さを説く『労働と日々』
自然哲学
ギリシア人は、論理と議論を重視し、自然現象を神話でなく合理的根拠で説明しようとした。
前6世紀、イオニア地方のミレトスを中心にイオニア自然哲学が発達した。
代表的哲学者
ピタゴラス
「ピタゴラスの定理(三平方の定理)」を発見した人物
ピタゴラス
劇
アテネの祭典では悲劇や喜劇のコンテストが催され、鑑賞することはアテネ市民の義務でもありました。
代表的作家
悲劇
喜劇
アリストファネス
『女の平和』『女の議会』などの喜劇作家
言論
ペリクレスの指導の下でアテネの民主政は完成されました。
民会や民衆裁判所での弁論が市民生活にとって重要になりました。
弁論に勝つことを重視し、時に事実に反する詭弁を教える職業教師ソフィストが現れました。
代表的なソフィストには、「人間は万物の尺度」と主張したプロタゴラスがいました。
「人間は万物の尺度」
それぞれの人間に判断の基準があるから、普遍的・絶対的な判断の基準(真理)は存在しないとする考え
ソフィストの考えに対する批判者としてソクラテスが現れ、真理の存在を主張しました。
ソクラテスの哲学を受け継いだプラトン
は、事象の背後にあるイデアこそ永遠不変の実在であるとするイデア論や、少数の有徳者のみが政治を担当すべきとする国家論を説きました。
ソクラテス
学問
万学の祖
プラトンの弟子アリストテレスは、自然・人文・社会のあらゆる方面に思索を及ぼし、「万学の祖」と呼ばれる学問体系を築きました。
アリストテレスの学問は、後のイスラームの学問やヨーロッパ中世のスコラ学に影響を与えました。
歴史記述の祖
ヘロドトス
『歴史』でペルシア戦争を叙述した人物
「エジプトはナイルのたまもの」と、ナイル川に支えられた古代エジプト文明の繁栄を表現
トゥキディデス
『歴史』でペロポネソス戦争を叙述した人物
ヘロドトス
建築・美術
柱と建築
建築は、主に柱の様式によって分類されます。
ドーリア式・イオニア式・コリント式(左から順に)
アテネの女神神殿パルテノン神殿は、ドーリア式の神殿です。
パルテノン神殿
彫刻
フェイディアス
パルテノン神殿のアテナ女神像などをつくった人物
ヘレニズム時代以降
ヘレニズム文化
ヘレニズム時代に入ると、ギリシア文化は東方にも波及し、各地域の文化からも影響をうけて独自の文化を生み出しました。
これをヘレニズム文化といいます。
哲学
ポリス中心の考え方が変化し、ポリス市民という枠を越えた生き方を理想とする世界市民主義(コスモポリタニズム)の思想が生まれた。
哲学もポリス政治からの逃避と個人の内面的幸福の追求を説くようになり、次の人物が登場しました。
科学
エウクレイデス(ユークリッド)
「ユークリッド幾何学」と呼ばれる平面幾何学を集大成した人物
アルキメデス
「アルキメデスの原理(浮体の原理)」など数学・物理学の諸原理を発見した人物
ムセイオン
エジプトのアレクサンドリアにつくられた王立研究所