アフリカ地誌-概説

表記について

地形

アフリカの主な地形は次の図の通りです。
アフリカの地形
アフリカの地形

大地形

ほぼ全体が安定陸塊で、平均高度750mの台地高原状の地形です。
大陸の北西部には新期造山帯のアトラス山脈、大陸の南東部には古期造山帯のドラケンスバーグ山脈が位置します。
アフリカ大陸の断面図(赤道上)
アフリカ大陸の断面図(赤道上)
上図からわかるように、アフリカ大陸は標高200~1000mの土地が多くあります。
また、海岸から続く低地が狭いため、河口から内陸部へ船舶で入りにくくなっています。
大陸の東西は、東側が高い「東高西低」です。
大陸別・高度別面積の割合
200m以下(%) 200~500m 500~1000m 1000~2000m 2000~4000m 4000m以上 平均高度(m)
アジア 24.6 20.2 25.9 18 7.2 5.2 960
ヨーロッパ 52.7 21.2 15.2 5 2 0 340
アフリカ 9.7 38.9 28.2 19.5 3.7 0 750
北アメリカ 29.9 30.7 12 16.6 10.8 0 720
南アメリカ 38.2 29.8 19.2 5.6 5 2.2 590
オーストラリア 39.3 41.6 16.9 2.2 0 0 340
南極 6.4 2.8 5 22 63.8 0 2,200
全大陸 25.3 26.8 19.4 15.2 11.4 1.9 875
データが古く、補正がかかっているため、ヨーロッパとアジアは100%にならない

北端・南端の緯度

北端・南端は、ほぼ同緯度の35度です。
赤道はヴィクトリア湖の北を通過

キリマンジャロ

キリマンジャロはアフリカ大地溝帯の東、タンザニア領にあります。
アフリカ最高峰の標高5,895mで、頂上には氷河があります。
北側(ケニア側)から望むキリマンジャロ
北側(ケニア側)から望むキリマンジャロ

気候

アフリカの気候
アフリカの気候

南北対称の気候帯

赤道から北端・南端の35度にかけて、南北対象に熱帯・乾燥帯・温帯が順に並びます。

赤道付近(コンゴ盆地)

赤道低圧帯の影響で湿潤、周辺は冬に中緯度高圧帯亜熱帯高圧帯)で乾燥します。

回帰線付近(緯度23度26分)

常に中緯度高圧帯亜熱帯高圧帯)で乾燥します。

北端・南端(緯度35度)

夏は中緯度高圧帯亜熱帯高圧帯)で乾燥します。

対称になっていない地域

上記のようにアフリカの気候帯は南北対象ですが、熱帯が広がる赤道付近には、例外的に異なる気候帯が存在しています。
Cw(温暖冬季少雨気候)またはH(高山気候)の地域
Aw(サバナ気候)に隣接するCw(温暖冬季少雨気候)は、高地で気温が周囲よりも低くなっている地域です。
ケッペンの気候区分ではありませんが、これらの地域のなかには特色から高山気候(H)に分類されるものもあります。
例えば、エチオピアの首都アディスアベバ(標高2354m)が位置するエチオピア高原は、高山気候の特色をもち、気温の年変化が少なく温和です。
アフリカの角
アフリカ大陸の東端でインド洋に突き出ている地域は、形状から「アフリカの角」と呼ばれています。
「アフリカの角」は乾燥が激しく、干ばつに悩まされます。

冷涼海岸砂漠-ナミブ砂漠

アフリカ南西岸に沿って、流のベンゲラ海流が北上します。
空気が冷やされて安定し、雲を形成する上昇気流が生じず乾燥します。
このような成因で、ナミブ砂漠がアフリカ南西岸に沿って広がります。
南米のアタカマ砂漠もペルー海流が成因
ベンゲラ海流
ベンゲラ海流
ナミブ砂漠
ナミブ砂漠

マダガスカル島

マダガスカル島には、インド洋からの南東貿易風が吹きこみます。
島中央には南北に山脈が走り、島東部は年間を通して多雨になります。
マダガスカルと貿易風
マダガスカル島の気候と貿易風
貿易風
貿易風

各都市の雨温図

アフリカの都市
アフリカの都市
アルジェは、アルジェリアの首都です。
夏は北上した中緯度高圧帯(亜熱帯高圧帯)の影響で乾燥します。
アルジェの雨温図
アルジェの雨温図(Cs)
アビジャンは、コートジボワールの都市です。
赤道に近く、年間を通して気温が高いです。
冬は中緯度高圧帯(亜熱帯高圧帯)が南下し、乾季となります。
アビジャンの雨温図
アビジャンの雨温図(Aw)
アディスアベバは、エチオピアの首都です。
赤道近くですが、平均標高2300mのエチオピア高原に位置しているため高山気候の特徴をもち、気温の年変化が少なく温和です。
エチオピア高原周辺の低地は、サバナ気候(Aw)で年中高温です。
ケッペンの気候区分では温暖冬季少雨気候(Cw)
アディスアベバの雨温図
アディスアベバの雨温図(H)
ケープタウンは、南アフリカ共和国の都市です。
アフリカ大陸の南端に位置し、南半球の夏に南下した中緯度高圧帯(亜熱帯高圧帯)に覆われ、少雨になります。
ケープタウンの雨温図
ケープタウンの雨温図(Cs)
トゥアマシナは、マダガスカル東部の都市です。
年間を通して南東貿易風がインド洋から吹くため湿潤です。
トゥアマシナの雨温図
トゥアマシナの雨温図(Af)

旧宗主国

かつてのアフリカは、ほとんどの国がヨーロッパ諸国の植民地でした。
特にイギリスとフランスの動きは強く、イギリスはアフリカを縦断するように、フランスはアフリカを横断するように植民地を広げました。

各国の植民地

イギリス

アフリカ東部(エジプト・ケニアなど)
アフリカ西部の一部(ナイジェリア・ガーナなど)

フランス

アフリカ西部(アルジェリア・ナイジェリア・コートジボワール)
アフリカ東部の一部(マダガスカル

イタリア

リビア・ソマリア

ベルギー

コンゴ民主共和国・ルワンダ(1924年~)
アフリカの旧宗主国
アフリカの旧宗主国

アフリカ諸国の独立

ほとんどの国が、第二次世界大戦後に独立していきました。

第二次世界大戦前の独立

次の4ヵ国が第二次世界大戦前に独立を果たしました。

第二次世界大戦後の独立

1960年

アフリカ17ヵ国が独立した年で、「アフリカの年」と呼ばれています。

1963年

アフリカ統一機構(OAU)結成
アフリカの独立と連携の促進を目的とする国家群

2002年

アフリカ連合AU
アフリカ統一機構が発展・改組
アフリカ諸国のヨーロッパ型の政治・経済統合を目指す国家群

アフリカ最後の植民地

アフリカでは55カ国中54ヵ国が独立を果たしました。
西サハラは、旧スペイン領で、独立の過程で隣国モロッコの侵攻を受けて占領下に置かれました。
西サハラの独立をめぐり、抵抗運動を続ける現地住民やその運動を支援するアルジェリアが、モロッコとの対立を続けています。

民族・宗教・言語

南北での2分類

アフリカの民族・言語・宗教は、次の図のように南北で大別できます。
アフリカの民族・宗教
アフリカの民族・宗教

北アフリカ(北端~サヘル)

民族:アラブ系
人種:コーカソイド
宗教:イスラームのスンニ派
公用語:アラビア語(アフロ=アジア語族)

中南アフリカ

民族:アフリカ系(マダガスカルはマレー系)
人種:ネグロイド
宗教:キリスト教と原始宗教
公用語:旧宗主国の言語(民族ごとの独自の言語多いため)
原始宗教
集団の中で自然に形成された宗教で、開祖・教典・教理がなく、万物に霊魂・精霊が宿るという自然観をもつことが多い
アフリカの公用語
アフリカの公用語

アフリカの諸問題

アフリカではほとんどの国が独立を果たしましたが、まだ多くの課題が残っています。

人口・教育・医療

「子ども=労働力」の考えで教育が普及せず、識字率や女性の地位が低いままです。
結果として出生率が高くなり、人口増加率は世界全体の1.09%を大きく上回る2.65%です(2015~2020年の値から算出)。
また、栄養不足や風土病・感染症が多く、死亡率も高い状態です。
アフリカで最も人口が多い国はナイジェリア(2.0億人)

なお、栄養不足地域は、識字率の低い地域とほぼ一致します。
アフリカの識字率
アフリカの識字率

食料・砂漠化

過耕作・過放牧、薪炭材の過伐採、気候変動による干ばつが生じています。
サヘルの砂漠化や、チャド湖などの消失という危機に陥っています。
農業・漁業の生産が悪化し、食料不足に拍車をかけました。
サヘル
サハラ砂漠南縁の草原地域
サヘル
サヘル

サヘル
flickr(https://www.flickr.com)

経済・貿易

アフリカでは、植民地時代の影響が残り、特定の農作物の輸出が中心です。
このような経済状態をモノカルチャー経済と呼びます。
主要穀物の栽培よりもカカオ・コーヒーなど商品作物の栽培が優先され、食料不足の一因になっています。
このような現状に対して、公正な価格で代金支払いをおこない、モノカルチャー経済の国の発展に寄与しようとする運動「フェアトレード」があります。

内戦

ルワンダ内戦

旧宗主国のベルギーがルワンダ支配のために生み出した民族対立が、後にツチ人とフツ人の内戦に発展しました。
1994年には大量虐殺がおこり、今なお大きな傷跡を残しています。

ビアフラ戦争

1967~1970年、ナイジェリアのイボ族が分離独立を要求し、他民族や他国を巻き込んだ戦争に発展しました。
戦争後、ナイジェリアは次の2つを実施して民族融和を図りました。

スーダンの内戦

スーダンでは、民族対立、土地や水利権、原油の利権などを背景に争いが起こりました。
南北の対立
スーダンは、アラブ系が多い北部と、非アラブ系(黒人)が多い南部に二分されます。
アラブ系はイスラーム教徒で、非アラブ系の一部はキリスト教徒です。
スーダンの政府が北部中心の政策を採ったため、南部が分離・独立を求め、内戦へと発展しました。
2011年、南部が「南スーダン」として独立しました。
西部の争い
南北のアラブ系と非アラブ系の対立は、スーダン西部のダルフール地方にも飛び火し、2003年にダルフール紛争が勃発しました。
ダルフール地方では、以前からアラブ系と非アラブ系が土地や水利権、石油の利権をめぐって対立していました。
この紛争は、国際連合が「世界最悪の人道危機」と称するほどに発展しました。

西サハラの占領

西サハラは隣国モロッコに占領され、未だに独立ができていません。
さらに、西サハラを支援するアルジェリアとモロッコの対立も深まっています。

エチオピアの難民

エチオピアでは、紛争や気候変動による干ばつなどの影響で、多くの国内避難民・難民が生じています。
アフリカの内戦
アフリカの内戦

農業

アフリカの農業
アフリカの農業

焼畑農業

低緯度でキャッサバ(タピオカの原料)などイモ類を栽培します。
キャッサバの世界最大の生産国はナイジェリア
キャッサバの原産地は南アメリカ
キャッサバの生産
国名万t(2019年)
ナイジェリア5,919
コンゴ民主4,005
タイ3,108
ガーナ2,245
ブラジル1,750

プランテーション農業

輸出用に単一の農作物を大量栽培する農業をプランテーション農業と言います。
カカオの生産
国名千t(2019年)
コートジボワール2,180
ガーナ812
インドネシア784
ナイジェリア350
エクアドル284
カメル―ン280
コーヒー豆の生産
国名千t(2019年)
ブラジル3,009
ベトナム1,684
コロンビア885
インドネシア761
エチオピア483
ホンジュラス476
茶の生産
国名千t(2019年)
中国2,777
インド1,390
ケニア459
スリランカ300
ベトナム269
トルコ261

遊牧・オアシス農業・灌漑農業

外来河川や湧水、地下水を利用し、ナツメヤシ・小麦・綿花を栽培します。

人工の地下水路

山麓の地下水を、乾燥させないために地下に通した人工の水路で集落まで導水します。
このような地下水路は、西アジアや北アフリカでも見られます
各地で名称が異なり、北アフリカではフォガラと呼んでいます。
イランではカナートと呼称
フォガラ
フォガラ

地中海式農業

北端・南端の地中海性気候の地域で、夏にオリーブ・ブドウを栽培します。

鉱工業

アフリカの鉱工業
アフリカの鉱工業
石炭の生産
国名百万t(2018年)
中国3,697.7
インド728.7
インドネシア548
オーストラリア410.9
ロシア358.6
アメリカ合衆国325.8
南アフリカ共和国255.6
石炭の生産
国名百万t(2018年)
中国3,697.7
インド728.7
インドネシア548
オーストラリア410.9
ロシア358.6
アメリカ合衆国325.8
南アフリカ共和国255.6
カザフスタン101.1
コロンビア84.3
ポーランド63.9
金鉱の生産
国名t(2018年)
中国401
オーストラリア315
ロシア311
アメリカ226
カナダ183
ペルー143
インドネシア135
ガーナ127
メキシコ117
南アフリカ共和国117
銅鉱の生産
国名万t(2018年)
チリ583
ペルー244
中国159
コンゴ民主共和国123
アメリカ122
オーストラリア92
ザンビア85
メキシコ75
ロシア75
インドネシア65
ボーキサイトの生産
国名万t(2019年)
オーストラリア10,518
中国7,000
ギニア6,700
ブラジル3,400
インド2,300
インドネシア1,700
ジャマイカ902
カザフスタン580
ロシア557
サウジアラビア405
ダイヤモンドの生産
国名万カラット(2019年)
ロシア4,320
ボツワナ2,441
カナダ2,319
コンゴ民主共和国1,513
オーストラリア1,408
南アフリカ共和国991
アンゴラ841
ジンバブエ326
ナミビア240
レソト129