オセアニア地誌

表記について

地形

オセアニアは、オーストラリア大陸と島嶼で構成される地域です。
オセアニアの地形
オセアニアの地形

大地形

オーストラリア大陸

大部分が安定陸塊で、中央部には残丘ウルルの(エアーズロック)が位置します。
東部には期造山帯のグレートディバイディング山脈が東海岸に沿って連なります。
南方のタスマニアは、海面の上昇でオーストラリア大陸と分離された島で、期造山帯に属します。
ウルル
ウルル
*アボリジニ―による呼称

島嶼

火山島とサンゴ礁の島が太平洋に浮かびます。
火山・火山島の分布は環太平洋造山帯(新期造山帯)に重なり、海底火山やニュージーランド北島の火山が災害を引き起こします。
プレートの境界ではありませんが、ハワイ諸島のようにホットスポットによって形成された火山島もあります。
また、サンゴ礁の島は地球温暖化によってサンゴ礁の白化現象(劣化すること)や沈むことが危惧されています。
オセアニアの火山分布
オセアニアの火山分布
ルアペフ火山(NZ北島の最高峰の火山)
ルアペフ火山(NZ北島の最高峰の火山)
ロックアイランド
ロックアイランド
*サンゴ礁が隆起
オセアニアの島嶼は次のように3分類されます。
多くの国がイギリスから独立しているため、言語は語、宗教はキリスト教です。
島嶼の分類
島嶼の分類

サンゴ礁

サンゴ礁は、サンゴなど炭酸カルシウムからなる生物の分泌物や遺骸が、海底から発達してできた石灰岩の地形です。
熱帯から亜熱帯の、水温が温暖(25~30℃)できれいな海の海岸には、サンゴ礁が多く分布します。
そのためサンゴ礁は寒流の流れる地域に分布しにくいと言えます
サンゴ礁の分布
サンゴ礁の分布

グレートバリアリーフ

オーストラリア大陸北東部には、長さ2,000㎞にわたる礁のグレートバリアリーフがあります。
グレートバリアリーフ
グレートバリアリーフ

氷河地形

フィヨルド

ニュージーランド南島には大きな氷河が存在し、南西部にフィヨルドが発達しています。
ニュージーランド南島のフィヨルド
ニュージーランド南島のフィヨルド

気候

オセアニアの気候
オセアニアの気候

地域ごとの気候区分

南回帰線付近

一年を通して中緯度高圧亜熱帯高圧)帯の影響を受け、乾燥気候(BW)・ステップ気候(BS)が分布
南回帰線はオーストラリア大陸のほぼ中央を横断

オーストラリア大陸北部

冬季に北上した中緯度高圧亜熱帯高圧)帯の影響を受け、サバナ気候(AW)が分布

オーストラリア大陸南西部

夏季に南下した中緯度高圧亜熱帯高圧)帯の影響を受け、地中海性気候(Cs)が分布

オーストラリア大陸東部とニュージーランド

東部沿岸を流れる流の東オーストラリア海流の影響を受け、温暖湿潤気候(Cfa)・西岸海洋性気候(Cfb)が分布
特にニュージーランドは、暖流に加えて偏西風の影響も大きく、年間を通じて湿潤になり、西岸海洋性気候(Cfb)が分布
Cfa・Cfbの地域
Cfa・Cfbの地域

各都市の雨温図

オセアニアの都市
オセアニアの都市
ダーウィン
ダーウィンは、オーストラリア北部の港湾都市です。
都市名は『種の起源』の著者ダーウィンにちなみます。
熱帯で年間を通して暑く、南半球の冬季(北半球の夏季)は北上する中緯度高圧帯の影響で乾燥します。
ダーウィンの雨温図
ダーウィンの雨温図(Aw)
アリススプリングス
アリススプリングスは、オーストラリア中央部の都市です。
家畜の集散地、エアーズロックの観光拠点として知られています。
年間を通して中緯度高圧帯の影響を受け、降水がほとんどありません。
また、隔海度が大きいため、気温の年較差が大きくなります。
アリススプリングスの雨温図
アリススプリングスの雨温図(BS)
*データによってはBW
パース
パースは、オーストラリア西部の都市です。
内陸側に600㎞入ると、19世紀末のゴールドラッシュで栄えたカルグーリーの町があります。
パースは、南半球の夏季(北半球の冬季)に中緯度高圧帯の影響で乾燥します。
パースの雨温図
パースの雨温図(Cs)
シドニー
シドニーは、オーストラリア南東部にある、人口最大の都市です。
東部沿岸を暖流の東オーストラリア海流が流れるため、年間を通して温暖です。
パース付近が乾燥する南半球の夏季(北半球の冬季)にも、季節風の影響で降水があります。
シドニーの雨温図
シドニーの雨温図(Cfa)
メルボルン
メルボルンは、オーストラリア南東部にある都市で、シドニーに次ぐ人口をほこります。
シドニーより高緯度に位置し、やや冷涼な気候です。
メルボルンの雨温図
メルボルンの雨温図(Cfb)
クライストチャーチ
クライストチャーチは、ニュージーランド南島の都市です。
付近を流れる暖流の東オーストラリア海流と偏西風の影響を受け、気温の年較差が小さく、年間を通して湿潤です。
クライストチャーチの雨温図
クライストチャーチの雨温図(Cfb)

オーストラリア

基礎データ

オーストラリア
オーストラリア
人口(万人)(2020)2,550
面積(万㎢)(2019年)769
人口密度(人/k㎡)3
1あたりGNI(ドル)(2019年)55,100
民族ヨーロッパ系
公用語英語
主な宗教キリスト教
宗主国イギリス
首都キャンベラ

歴史

1770年
イギリスが領有を宣言しました。
1931年
イギリスと対等な独立国家として認められました。
ただし、現在もイギリス国王(女王)を国家元首とする体制が続いています。

人種・民族

白人

1788年
流刑囚含む最初のイギリス人移民団が到着しました。
19世紀半ば
ゴールドラッシュで白人以外の移民が増加しました。
オーストラリアは、この状況に対して、白人以外の移民を禁止する白豪主義を採用しました。
1973年
白豪主義を廃止し、多文化主義を採用しました。

先住民アボリジニー

オーストラリアの先住民アボリジニーは、白人の入植後に迫害され、人口を激しく減らしました。
1930年代以降、オーストラリア政府の保護政策で人口が増加しました。
アボリジニ―の人口推移
アボリジニ―の人口推移

人口・都市

人口分布

乾燥地域が多いため、人口は住みやすい南東部と南西部に集中します。
加えて、南東部と南西部の都市に人々が集まるため、都市人口率が高いです。
都市人口率
国名都市人口(万人)2018年(%)1950年(%)1970年(%)1990年(%)2010年(%)
アメリカ26,87882.364.273.675.380.8
イギリス5,55283.479.077.178.181.3
オーストラリア2,13086.077.084.085.485.2
フランス5,24780.455.271.174.178.4
日本11,65291.653.471.977.390.8

都市

オーストラリアの人口100万人以上の都市
オーストラリアの人口100万人以上の都市
都市名人口(万人)統計年次備考
シドニー5132017年
メルボルン4852017年
ブリズベン2412017年
パース2042017年
アデレード1332017年
キャンベラ432020年首都
シドニー
キャンベラ
キャンベラの街路形態
キャンベラの街路形態
キャンベラ
キャンベラ

農業

オーストラリアは、乾燥地域が多いため耕地率が低いです。
人口が少なく、農民1人あたり耕地が非常に大きくなります。
土地利用(2019年)
国名耕地率(%)牧場・牧草地率(%)森林率(%)農民1人あたり耕地(ha)就農率(%)
アメリカ17.526.833.973.21.4
オーストラリア4.043.117.495.02.6
日本10.41.668.41.73.4
オーストラリアの農業
オーストラリアの農業

地域ごとの農業

グレートアーテジアン盆地(大鑽井盆地)
グレートディバイディング山脈の山麓では、山地の雨水が水を通しにくい地層の底に溜まっています。
地層が掘り抜いた井戸で水(被圧地下水)を得ます。
この水は塩分濃度が高く、灌漑用途や人の飲み水には不向きです。
主にメリノ種の羊を放牧します。
掘り抜き井戸と被圧地下水
掘り抜き井戸と被圧地下水
掘り抜き井戸
掘り抜き井戸
羊(メリノ種)
羊(メリノ種)
南西部・南東部
降水量が比較的多い地域です。
集約的牧羊・小麦の栽培がおこなわれています。
また、南西部・南東部には大都市が立地するため、園芸農業・酪農も盛んにおこなわれています。
マリーダーリング盆地
オーストラリア南東部には、マリー川とダーリング川が流れます。
2つの河川に名前が由来するマリーダーリング盆地は、内陸に位置するため降水量が多くありません
オーストラリアアルプス山脈(グレートディバイディング山脈の南部)の東側は降水量が多いため、川の水をせき止め、西側のマリー川に導水しました。
この導水で水力発電や灌漑農業をおこなう一大計画をスノーウィーマウンテンズ計画と呼んでいます。
マリーダーリング盆地で灌漑農業がおこなえるようになりましたが、マリー川流域で塩害が深刻化しました。
マリーダーリング盆地
マリーダーリング盆地
スノーウィーマウンテンズ計画
スノーウィーマウンテンズ計画
北部
肉牛の放牧やサトウキビの栽培がおこなわれています。

スノーウィーマウンテン計画

山脈の西側は少雨、山脈の東側は多雨です。
東側の雨水を西側のマリー川に導水し、灌漑農業に利用します。
近年、灌漑農業によって、マリー川流域での塩害が深刻化しました。

鉱工業

オーストラリアの鉱工業
オーストラリアの鉱工業

代表的な鉱産資源

鉄鉱石
西部のピルバラ地区に分布します。
生産量は世界最大です。
マウントホエールバック
マウントホエールバック
石炭
グレートディバイディング山脈付近に分布します。
ボーキサイト
熱帯で降水量が多い北部のウェイパなどに分布します。
生産量は世界最大です。
南西部のカルグーリーに分布します。

貿易

オーストラリアは、国内市場が狭く、賃金水準が高いです。
そのため工業が発達しにくく、先進国ですが資源の輸出が中心です。

輸出相手国

~1960年代
歴史的つながりから、イギリスが最大の相手国でした。
1970~2000年代
日本が最大の相手国でした。
現在
中国が最大の相手国です。

対日貿易

日本最大の鉄鉱石・石炭の輸入先です。

貿易

オーストラリア 輸出品目(2020年、%)
鉄鉱石32.7
石炭12.3
金(非貨幣用)7.2
肉類4.1
機械類3
オーストラリア 輸入品目(2020年、%)
機械類27.2
自動車11.3
石油製品5.5
医薬品4.6
衣類3.5

ニュージーランド

基礎データ

ニュージーランド
ニュージーランド
人口(万人)(2020)482
面積(万㎢)(2019年)27
人口密度(人/k㎡)18
1あたりGNI(ドル)(2019年)42,760
公用語英語・マオリ語
主な宗教キリスト教
首都ウェリントン

歴史

1769年
イギリスが領有を宣言しました。
1947年
イギリスと対等な独立国家として認められました。
ただし、現在もイギリス国王(女王)を国家元首とする体制が続いています。

人種・民族

白人

1840年以降、白人が入植しました。

先住民マオリ

白人の入植後、戦争や伝染病で人口が激減しました。
現在は人口が増加に転じ、マオリ語が公用語に採用されました
カナダ・オーストラリアでは先住民の言語を公用語に不採用
マオリの人口推移
マオリの人口推移

地形

北島

ニュージーランドの北島では、地震や火山が多いです。
火山の熱を利用した地熱発電が発達しています。
ルアペフ火山(NZ北島の最高峰の火山)
ルアペフ火山(NZ北島の最高峰の火山)

南島

沿岸
南島の南西部の沿岸にフィヨルドが発達しています。
ニュージーランド南島のフィヨルド
ニュージーランド南島のフィヨルド
山脈
南島はサザンアルプス山脈が縦断しています。
偏西風の風上(西側)は多雨、風下(東側)は少雨です。
偏西風とサザンアルプス山脈
偏西風とサザンアルプス山脈
ニュージーランド南島の降水
ニュージーランド南島の降水
ホキティカの雨温図
ホキティカの雨温図(Cfb)
クライストチャーチの雨温図
クライストチャーチの雨温図(Cfb)

農業

ニュージーランドは、牧草地の割合が高く、耕地率が低いです。
ニュージーランドの土地利用(2019年)
耕地率(%)牧場・牧草地率(%)森林率(%)農民1人あたり耕地(ha)就農率(%)
2.336.937.54.15.8
ニュージーランドの農業
ニュージーランドの農業

北島

酪農

南島

鉱工業

水力発電によるアルミニウム工業が発達しています。

貿易

ニュージーランド 輸出品目(2020年、%)
乳製品18.3
木材6.8
果実6.5
羊・ヤギ肉6.5
牛肉6.2
ニュージーランド 輸入品目(2020年、%)
機械類24.3
自動車10.9
石油4.2
石油製品4
精密機械3

太平洋諸島

太平洋諸島
太平洋諸島

ニューカレドニア島

ニッケル鉱の生産地です。

ツバル・キリバス

温暖化による海面上昇で、国土の大半が水没すると言われています。

ハワイ諸島

ホットスポットで形成された火山島です。
ホットスポット
ホットスポット