東南アジア地誌-概説

表記について

地形

東南アジアの主な地形は次の図の通りです。
東南アジアの地形
東南アジアの地形

大陸部と島嶼部

東南アジアの地域は、次の2つに大別されます。

プレートの境界

東南アジア付近では4枚のプレートが接します。
これらプレートの境界は「狭まる境界」です。
境界部分の海底には海溝が形成されます。
海洋側のプレートが沈み込んだ先には、海溝に平行するように弧状列島や火山が形成されます。
東南アジアの島嶼部は弧状列島であり、火山が多く分布しています。
海溝付近には火山が分布しないことに注意
東南アジアのプレート狭まる境界
東南アジアのプレートと狭まる境界
東南アジアの火山分布
東南アジアの火山分布

自然災害

東南アジアの狭まる境界付近では、地震活動や火山活動が多くなります。
近年、次のような自然災害による被災が報道されています。

海峡

マラッカ海峡は、マレー半島とスマトラ島との間の海峡です。
この海峡は、西アジア(中東)からの原油を日本へ運ぶタンカーが頻繁に往来します。
超大型のタンカーは、浅く通行が激しいマラッカ海峡を避け、遠回りのロンボク海峡を通ります。

三角州

東南アジアの大陸部を流れるエーヤワディー川・チャオプラヤ川・メコン川の河口には、三角州が形成されています。
メコン川
チベット高原を水源とする国際河川

気候

東南アジアの気候
東南アジアの気候

季節風

東南アジアは次のように季節風の影響を受けます。
11~4月:北東季節風で少雨
5~10月:南西季節風で多雨
東南アジアの季節風(夏) 東南アジアの季節風(冬)
東南アジアの季節風

スコール

東南アジアの雨季には、スコールと呼ばれる激しいにわか雨がほぼ毎日あります。
スコール
スコール

住居

東南アジアの雨が多い地域は、地表に湿気がたまります。
また、激しいスコールで川が氾濫し、住居が水害に遭うこともあります。
東南アジアの伝統的住居は、通気性の向上や水害回避のために、床を地面から離した高床式住居です。
高床式住居
高床式住居

各都市の雨温図

東南アジアの都市
東南アジアの都市
ハノイ
ハノイはベトナムの首都です。
冬は北東季節風と南下した中緯度高圧帯の影響で少雨になります。
ハノイの雨温図
ハノイの雨温図(Cw)
バンコク
バンコクはタイの首都です。
冬は北東季節風と南下した中緯度高圧帯の影響で少雨になります。
ハノイに比べて赤道に近いため、気温が高く、また、気温の年較差が小さくなります。
なお、太陽の見かけの通り道がバンコク付近を通る5月頃は、最も降水量が多くなります。
バンコクの雨温図
バンコクの雨温図(Aw)
クアラルンプール
クアラルンプールはマレーシアの首都です。
赤道に近く、年間を通して降水が多くなります。
クアラルンプールの雨温図
クアラルンプールの雨温図(Af)
ジャカルタ
ジャカルタはインドネシアの首都です。
南半球に位置するため、11~4月が夏に、5~10月が冬になります。
ジャカルタの雨温図
ジャカルタの雨温図(Am)

民族・言語・宗教

民族

東南アジアの国は、すべて多民族国家です。

宗教

宗教は大陸部・島嶼部で次のように大別されます。
大陸部:
陸路でインドから伝わった仏教が波及
島嶼部:
イスラーム教徒(ムスリム)の商人が海上交易で往来し、イスラームが波及
旧スペイン領・旧ポルトガル領では、キリスト教のカトリックの信者が多くなります。
大航海時代、カトリック教国は熱心に布教活動を展開
東南アジアの宗教
東南アジアの宗教

旧宗主国

東南アジアのほとんどの国が、欧米諸国の植民地でした。
宗主国
植民地を従えている国

イギリスの植民地

ミャンマー・マレーシア・ブルネイ

フランスの植民地

ラオス・カンボジア・ベトナム

オランダの植民地

インドネシア

スペインの植民地

フィリピン
16世紀半ばからスペインの植民地、19世紀末からアメリカの植民地

独立を維持した国

タイは、イギリスとフランスの植民地の緩衝国として独立を維持しました。
東南アジアの宗主国
東南アジアの宗主国

まとめ

東南アジアの宗教・旧宗主国・公用語
宗教 旧宗主国 公用語
ミャンマー 上座仏教(小乗仏教) イギリス ミャンマー語
マレーシア イスラーム イギリス マレー語、中国語、タミル語、英語
シンガポール 仏教など (1965年、 マレーシアから分離) マレー語、中国語、タミル語、英語
ブルネイ イスラーム イギリス マレー語、英語
タイ 上座仏教(小乗仏教) なし タイ語
ラオス 上座仏教(小乗仏教) フランス ラオス語
カンボジア 上座仏教(小乗仏教) フランス クメール語
ベトナム 大乗仏教 フランス ベトナム語
フィリピン カトリック アメリカ(~19世紀末、スペイン) フィリピノ語、英語
インドネシア イスラーム オランダ インドネシア語
東ティモール カトリック (2002年、インドネシアから分離) ポルトガル語、テトゥン語

国家群-ASEAN

結成・加盟

1967年、ASEAN東南アジア諸国連合)結成
当初は社会主義に対する軍事同盟
次の5ヵ国が原加盟国
(1984年、ブルネイがイギリスから独立)
1984年、ブルネイ加盟
(1991年、ソ連解体)
1995年、ベトナム加盟
1997年、ラオス・ミャンマー加盟
1999年、カンボジア加盟
原加盟国は、「ASEANの"たましいふ"るえる」と暗記
ASEANの加盟国
ASEANの加盟国

工業化

第二次世界大戦後、東南アジア諸国は工業化に遅れていました。
工業製品の多くを外国から輸入していたため、自国で保有する外貨が流出していました。
そのため、繊維などの軽工業をまずは自国で生産する輸入代替型の工業化が図られました。
しかし、国内市場の規模が小さく、発展には繋がりませんでした。
輸入代替型
輸入代替型
1970年代、ASEAN諸国は、輸入代替型の工業化から、輸出志向型の工業化へ政策を転換しました。
市場を外国に求め、輸出向けの製品生産などを目指しました。
輸出志向型
輸出志向型
この一環として、雇用機会の増大や技術力の向上などを期待し、免税などの優遇措置を与える地区輸出加工区を定め、外国企業を誘致しました。
代表的な輸出加工区として、シンガポールのジュロン、マレーシアのペナンがあります。
国家群ごとのGDP(2019年)
面積
(万㎢)
人口
(2020年)(億人)
GDP
(億ドル)
貿易額(億ドル)
輸出
(2019年)
輸入
(2019年)
EU 413 4.5 156,265 58,140 55,293
USMCA
(NAFTA)
2,178 5 244,385 25,483 34,602
ASEAN 449 6.7 30,992 13,475 13,268
AU 2,998 13.4 23,771
CIS 2,097 2.4 20,928
MERCOSUR 1,392 3.1 27,904 3,285 2,753
日本 38 1.3 50,818 7,055 7,477

貿易

1993年、AFTA(ASEAN自由貿易地域)の発足
ASEAN域内の関税撤廃や貿易拡大を目指す自由貿易協定
2005年、AEC(ASEAN経済共同体)へ発展
ASEAN諸国で目指すEUのような経済圏

原加盟国の貿易品目の変化

タイ
マレーシア
フィリピン
インドネシア

加盟国の貿易の特徴

シンガポール:
最初に経済発展、GNIは先進国並み
タイ:
海外自動車メーカーが進出、自動車の生産拠点
マレーシア:
家電やコンピュータなどの精密機械の生産拠点
フィリピン :
ASEAN原加盟国の中で遅れ
野菜・果実の割合が高い
インドネシア:
ASEAN原加盟国の中で遅れ
今なお一次産品の割合が高い(東南アジア唯一のOPEC加盟)
GDPは高いが、人口が多いため1人あたりGNIは低い
ブルネイ:
産油国で人口が極めて少ないため、1人あたりGNIは高い

次の国はいずれも1人あたりGNIが低い
ベトナム:
賃金高水準の近隣国から工場が移転し、工業化進展
ミャンマー:
ASEANの中でも遅れ気味
ラオス:
ASEANの中でも遅れ気味
カンボジア:
ASEANの中でも遅れ気味
国名 GDP
(2020年、億ドル)
1人あたりGNI
(2020年、ドル)
主要輸出品
シンガポール 3,400 54,920 機械類、石油製品、化学薬品、プラスチック
ブルネイ 120 32,230 原油、LNG
マレーシア 3,367 10,580 機械類、パーム油、原油、LNG
タイ 5,018 7,050 機械類、自動車、石油製品
インドネシア 10,584 3,870 石炭、パーム油、LNG、原油
フィリピン 3,615 3,430 機械類、建築用木工品、衣類、野菜・果実
ベトナム 2,712 2,660 機械類、原油、衣類、魚介類、はきもの
ラオス 191 2,480 銅、衣類、木材、電力
東ティモール 18 1,830 中古繊維製品、コーヒー豆、機械類
カンボジア 253 1,490 衣類、切手、肥料
ミャンマー 762 1,260 ガス、木材、衣類
日本 49,754 40,540