気候帯
A~Eの分類
ドイツの気候学者ケッペンは、植生とそれに深く関わる気温・降水に注目し、気候の分類をおこないました。
ケッペン
ケッペンは、樹林の有無などの景観に基づき、赤道から極地(北極あるいは南極)にかけて気候が似た地域を大きく5つに分類できると考えました。
赤道に近い方から順に、「熱帯・乾燥帯・温帯・亜寒帯(冷帯)・寒帯と分類したのです。
これらは気候帯と呼ばれ、それぞれアルファベット1文字で「A・B・C・D・E」と表記されます。
これら5つの気候帯のうち、A・C・Dは樹木が生育できるため樹林気候と呼ばれ、B・Eは樹木が生育できないため無樹林気候と呼ばれます。
気候帯の分布
気候区
気候帯の細分
ケッペンの5つの気候帯は、気温・降水に基づき、さらに12の気候区に分類されます。
12の気候区は、気候帯の記号(A~E)に、fやaなどの小文字あるいはSやTなどの大文字を併せ、記号で表すことができます。
なお、これらfやSなど2文字目以降のアルファベットは、ある意味をもつドイツ語の頭文字です。
樹林気候 |
A 熱帯 |
Af Am Aw |
熱帯雨林気候
熱帯モンスーン気候(弱い乾季のある熱帯雨林気候)
サバナ気候
|
C 温帯 |
Cfa Cfb Cs Cw |
温暖湿潤気候
西岸海洋性気候
地中海性気候
温暖冬季少雨気候
|
D 亜寒(冷)帯 |
Df Dw |
亜寒帯湿潤気候
亜寒帯冬季少雨気候
|
無樹林気候 |
B 乾燥帯 |
BS BW |
ステップ気候
砂漠気候
|
E 寒帯 |
ET EF |
ツンドラ気候
氷雪気候
|
2文字目のアルファベット意味
f…年中降雨(feucht)
s…夏に乾燥(sommer trocken)
w…冬に乾燥(winter trocken)
m…中間(mittelform)
S…ステップ(Steppe、平らな土地の意)
W…砂漠(Wüste)
T…ツンドラ(Tundre、木がない土地の意)
F…氷雪(Froste)
3文字目のアルファベット意味
a…最暖月平均気温22℃以上
b…最暖月平均気温22℃未満
気候区の分布
気候区の分布は次の通りです。
気候区の分布
大陸別の気候区分の割合(%)
| ユーラシア | アフリカ | 北アメリカ | 南アメリカ | オーストラリア | 南極 |
Af | 3.5 | 19.8 | 2.8 | 26.9 | 7.9 | - |
Aw | 3.9 | 18.8 | 2.4 | 36.5 | 9.0 | - |
BS | 15.9 | 21.5 | 10.7 | 6.7 | 25.8 | - |
BW | 10.2 | 25.2 | 3.7 | 7.3 | 31.4 | - |
Cf | 5.7 | 0.3 | 10.7 | 14.0 | 11.2 | - |
Cs | 2.2 | 1.3 | 0.8 | 0.3 | 7.9 | - |
Cw | 9.6 | 13.1 | 2.0 | 6.7 | 6.8 | - |
Df | 25.8 | - | 43.4 | - | - | - |
Dw | 13.4 | - | - | - | - | - |
ET | 9.8 | - | 17.3 | 1.6 | - | 3.6 |
EF | - | - | 6.2 | - | - | 96.4 |
亜寒帯湿潤気候は、北アメリカ大陸、次いでユーラシア大陸に広く分布します。
つまり、北半球に広く分布すると言えます。
反対に、北半球で最も分布が狭いのは地中海性気候です。
ステップ気候・砂漠気候は、オーストラリア大陸、次いで アフリカ大陸 に広く分布します。
亜寒帯冬季少雨気候がユーラシア大陸にしかないこと、オーストラリア大陸・アフリカ大陸には亜寒帯湿潤気候・亜寒帯冬季少雨気候・ツンドラ気候・氷雪気候が存在しないことも覚えておきましょう。
緯度や東岸・西岸との関係性
気候区の分布は、緯度や東岸・西岸に影響されるためある程度の法則があり、それをわかりやすくしたのが大陸の模式図です。
地球の緯度ごとの陸地と海洋の割合に基づき、地球の大陸を1つとして考えると次のような図で表せます。
色塗り部分が陸地で、これを仮想大陸と言います。
南緯60°あたりは陸地がないため、色塗り部分がなくなっています。
大陸模式図
このような1つの大陸があるとすれば、緯度や東岸・西岸の影響をうけ、気候区の分布は次のようになります。
実際の世界の気候区の分布と比べてみましょう。
概ねこの模式図のように分布しているのではないでしょうか。
大陸模式図
気候区の判定
気候区について、さらに詳しく見ていきましょう。
12の気候区は、気温・降水に基づき分類されていると既に学習しました。
ある都市の気温・降水に関する次のような表を見れば、その都市がどの気候区に該当するかを判定できます。
判定は、「Eか否か」→「Bか否か」→「AかCかDか」と順に進めていきます。
月 |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
全年 |
気温 (℃) |
16 |
17.6 |
20.2 |
23.9 |
27.5 |
28.9 |
29 |
28.2 |
27.5 |
24.7 |
20.9 |
18.1 |
23.5 |
降水量 (mm) |
23.6 |
33.4 |
47.4 |
112.9 |
202.3 |
239.0 |
252.4 |
322.0 |
251.0 |
163.7 |
45.6 |
10.9 |
1704.2 |
まず「Eか否か」
各月の平均気温のうち、最も高いものを最暖月平均気温と言います。
最暖月平均気温が10℃未満なら寒帯(E)と判定されます。
もしEであれば、さらにETかEFかを判定しましょう。
最暖月平均気温が10℃未満で0℃以上ならツンドラ気候(ET)、最暖月平均気温が0℃未満なら氷雪気候(EF)です。
Eでなければ、次の判定に移りましょう。
次に「Bか否か」
Bかどうかの判定は大変煩雑です。
降水型の判定(sかwかfか)
各月の降水量のうち、最も少ないものを最少雨月降水量、反対に最も多いものを最多雨月降水量と言います。
また、1年間の各月の気温が高い時期を「夏」、低い時期を「冬」と言います。
北半球では「6~8月」に夏が、南半球では「12~2月」が夏です。
夏に最少雨月があるなら、次の①②を比較します。
夏の方が冬より少なければ(①<②)、降水型はs(夏に乾燥)、そうでなければf(年中湿潤)となります。
冬に最少雨月があるなら、次の①'②'を比較します。
冬の方が夏より少なければ(①'<②')、降水型はw(冬に乾燥)、そうでなければf(年中湿潤)となります。
いよいよBか否かの判定
ここでは、年間降水量をR、年間平均気温をt、乾燥限界値をrとおきます。
降水型sならr=20t
降水型fならr=20(t+7)
降水型wならr=20(t+14)
求められたrをRと比較します。
r≦RならBではない(A・C・Dのいずれか)
1/2r≦R<rならBS(ステップ気候)
R<1/2rならBW(砂漠気候)
次の都市の気候区を試しに判定してみましょう。
月 |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
全年 |
気温 (℃) |
24.0 |
27.2 |
31.5 |
34.3 |
34.4 |
32.0 |
29.4 |
28.1 |
29.4 |
31.1 |
28.5 |
25.2 |
29.6 |
降水量 (mm) |
0.0 |
0.0 |
2.0 |
7.3 |
27.3 |
74.9 |
136.9 |
161.2 |
85.6 |
13.3 |
0.0 |
0.0 |
508.5 |
月平均気温が最も高い月(最暖月)は5月であり、この時期あたりの夏に最多雨月があります。
その半年後の冬に最少雨月があります。
冬の最少雨月降水量✕10=0(mm)、これは夏の最多雨月降水量161.2mmを下回ります。
すなわち降水型はw(冬に乾燥)です。
降水型wならr=20(t+14)なので、r=20(29.6+14)=872となります。
1/2r≦R<r、具体的には508.5<872となるので、この都市の気候区はステップ気候と判定できます。
計算が苦手な場合、受験まで余裕がない場合
共通テスト・センター試験の問題では、細かく計算しなくても問題が解けます。
計算が煩雑で苦手という人、覚える時間的余裕がない人は、次のようにひとまず押さえておきましょう。
年間降水量が500mm未満であれば、おおよそ乾燥帯(B)と判定されます。
年間降水量が500mm未満~250mm程度ならステップ気候(BS)、250mm未満なら砂漠気候(BW)です。
必ずしもこの通りではないので注意
最後に「AかCかDか」
E・Bのどちらでもなければ、最後に「AかCかDか」を判定します。
各月の平均気温のうち、最も低いものを最寒月平均気温と言います。
最寒月平均気温が18℃以上なら熱帯(A)、18℃未満で-3℃以上なら温帯(C)、-3℃未満なら亜寒(冷)帯(D)です。
A・C・Dのどれか判定できたら、「Bか否か」のところで判定した
降水型を思い出しましょう。
Dで降水型がfなら亜寒帯湿潤気候(Df)、降水型がwなら亜寒帯冬季少雨気候(Dw)です。
やっかいなAfとCf
Aで降水型がfなら熱帯雨林気候(Af)ですが、最少雨月降水量が60mm未満の月がひと月でもあれば、弱い乾季がある熱帯雨林気候、いわゆる熱帯モンスーン(Am)となります。
また、Cで降水型がfのものは、温暖湿潤気候(Cfa)と西岸海洋性気候(Cfb)の2つがあります。
最暖月平均気温が22℃以上なら温暖湿潤気候(Cfa)、そうでなければ西岸海洋性気候(Cfb)となります。
気候区に関わるデータの提供方法
表
気候区の判定は、気温・降水量に基づいておこないます。
その気温・降水量のデータは様々な形で提供されます。
その一例が、次の「表」です。
東京の気温と降水量
月 |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
気温 (℃) |
6.1 |
6.5 |
9.4 |
14.6 |
18.9 |
22.1 |
25.8 |
27.4 |
23.8 |
18.5 |
13.3 |
8.7 |
降水量 (mm) |
52.3 |
56.1 |
117.5 |
124.5 |
137.8 |
167.7 |
153.5 |
168.2 |
209.9 |
197.8 |
92.5 |
51.0 |
雨温図・ハイサーグラフ
「表」のほかに、気温・降水量を示すものに、「雨温図」「ハイサーグラフ」があります。
東京の気温・降水量(雨温図)
東京の気温・降水量(ハイサーグラフ)
雨温図
雨温図は、気温を折れ線グラフで、降水量を棒グラフで示したものです。
折れ線の凹凸が大きいほど気温の年較差が大きく、水平に近いほど小さいことになります。
また、棒グラフに数ヶ月続く凹または凸があると、乾季・雨季が存在することになります。
雨温図では、7・8月頃の気温が他の月よりも高めの場合は北半球であることを、反対に1・2月頃の気温が高めの場合は南半球であることを示しています。
ハイサーグラフ
ハイサーグラフは、月ごとに気温と降水量の相関値を点で示し、1月から順に線で結んだものです。
グラフの縦幅は気温の年較差の大小を示し、横幅は乾季・雨季の降水量の差があることを示している。
ハイサーグラフでは、縦軸で示された7・8月頃の気温が他の月よりも高めの場合は北半球であることを、反対に1・2月頃の気温が高めの場合は南半球であることを示しています。